1. ホーム
  2. /
  3. ブログ
  4. /
  5. カメラ・写真撮影
  6. /
  7. 夜景の撮り方・レタッチの仕方〜カメラ任せでは夜の雰囲気は出ない 『撮影事例編』

夜景の撮り方・レタッチの仕方〜カメラ任せでは夜の雰囲気は出ない 『撮影事例編』

大阪ミナミ・笠屋町筋

「きれいな夜景を目の前にして、シャッターを押した。しかし、撮れた写真を見たら、まったく違った」といった経験をした人は多いでしょう。

撮影時に気にしなければいけないポイントはいくつもあります。しかし、実は夜景の写真を夜景らしくしている要素の半分以上は、撮ったあとのレタッチによるものです。ほかの方はわかりませんが、少なくとも私はそうです。

また、夜景の撮影とレタッチにはいくつものスキルが複雑に絡み合っています。一口に「夜景」や「夜間撮影」といってもいくつかシチューションがあり、必要なスキルも異なります。実際に撮ったものを元にこれらをご紹介しましょう。

もし、ご自身でも夜景のレタッチをしたい人がおられれば、『夜景の撮り方・レタッチの仕方〜カメラ任せでは夜の雰囲気は出ない 『レタッチ実践編』』もお読みいただければ幸いです。

夜景だからといって、暗くなりきっては撮れない

先に、全体を通してほぼ共通する点をいくつか挙げておきます。

  • ・当たり前の話だが、写真は光がないと撮れない。夜景だからといって、真っ暗になってからではまったく写らない場合も多い。
  • ・「雰囲気を壊してしまう」としてストロボを避ける人も多いかもしれない。しかし、むしろ積極的に使ったほうがいい場面も多い。ただし、あからさまに「使った」とはわからないようにする。
  • ・ほかの撮影でも同じだが、1枚の画像も部分部分を見ると光のコンディションが異なっているのが普通だ。夜景(夜間撮影)は特に極端になる。だから、部分ごとのレタッチが必要になる。
  • ・「レタッチをする」は、「Adobe Photoshopかそれに類する画像編集ソフト(Photoshop Elements、GIMPなど)を使う」とほぼ同じ話である。「ソフトを入手する。レタッチに習熟する」の覚悟がなければ、今回の話とは無縁と思ったほうがいい。

カメラ任せの露出やシャッタースピードでは夜景は撮れない

夜景(夜間撮影)がうまくいかないのは、「カメラはもともと昼間使うように開発されている」と「撮影後のレタッチがないと、夜景の写真として成立しない。しかし、レタッチをやらない人が大半だ。しても十分なスキルがない」が大きな理由でしょう。

カメラ任せにすると昼間と同じ明るさに写る

「夜景のつもりで撮ったが、撮れた写真はまったく昼間にしか見えない」は、カメラをオートでしか使わない人にありがちな失敗です。

細かい話は省きますが、カメラの露出計は真っ黒なものはグレーに、真っ白なものもグレーになるように絞り値(露出値)やシャッタースピードを割り出します。

絞り優先(露出優先)、シャッタースピード優先も、それらの数値が元になっています。露出とシャッタースピードの組み合わせをカメラが決める「プログラム」も同様です。

ですから、「空が暗くて、建物などは照明が照らしたところだけ明るく見える」のつもりでとっても、空は明るく、建物は光が当たっていないところに明るさを合わせて、写ってしまうのです。

夜間モードを使ってもレタッチは不要にならない

今のカメラであれば、かなりの確率で「夜間モード」が用意されているでしょう。

メーカーによって違いがあるかも知れません。しかし、基本になっているのは「ストロボを弱めにする」「シャタースピードは長め、露出値は小さめ(絞りを大きく開ける)」のようです。これは、主に「ストロボが当たったメインの被写体だけではなく、ストロボが届いていない背景もある程度明るく写る」ようにするためのもののようです。

大半の人には、なにをやっているのかはブラックボックスでしょう。思ったとおりにいかない場合に、工夫のしようがありません。

また、「部分ごとのレタッチが必要になる」はそのまま残ります。

「夜景」とひとことでいうが、必要なスキルは場面ごとに違う

ここからは4つの事例に分けて、解説します。

撮影事例① 大阪・道頓堀と遊覧船

最初は大阪の道頓堀です。季節は8月半ばで、時間は午後8時前でした。夜といえば夜ですが、肉眼で見ても空には微妙に明るさも残っています。写真にすると、さらに明るく写ります。

夜景ならば使いたい、あとからの補正に強いRAWデータ

今回使った写真はいずれも、撮影時のカメラの設定でJPGとRAWが同時に記録できるようにしました。

まず、アップするのはそのうちのJPGの撮影データです。私の方ではレタッチはしていませんので、よくいう「撮って出し」とお考えください。ただ、CFカードなどに保存された際にはすでに、カメラによる自動でホワイトバランスやコントラストなどの補正がされ、データサイズも強力に圧縮されています。

この道頓堀のJPGデータでは、人工の光っぽい色合いがなくなっています。ホワイトバランスが自動で調整された結果でしょう。また、いくらか露出アンダーにしたはずなのですが、これでは左右の建物が明るすぎて、まったく夜っぽくありません。

かなりの補正の必要があります。しかし、JPGだとすでに補正がされ、データサイズも圧縮されているために、さらに補正をかけると大きく劣化します。ここはRAWの出番です。

RAWとは、イメージセンサーが受けた光のデータをそのまま残したものです。カメラメーカーごとに、ファイルの拡張子が違っていて、ソニーは「.arw」、キヤノンは「. CR2」「.CR3」、ニコンは「.NEF」「.NRW」といった具合です。

いずれのデータも画像にさえなっていません。レタッチをするにもその前に「現像」をし、画像に変えなければいけません。ただ、フルに撮影時のデータが残されています。その分、自分の手で補正するのに適しています。

「周辺を焼き込む」は夜景にするための基本中の基本

補正する必要がある点は……

①主役になる遊覧船の明るさは、撮影時に露出はアンダーめになるようにしたはずだった。まだ明るすぎるので暗くする。

②周囲の建物は、ビルの照明などが壁を照らしていて、まったく夜っぽくない。遊覧船以上に暗くする。

③奥の空も明るい。これは、広い範囲の夜景を撮る時に最もあり得るパターン。地上が暗くなり、肉眼では十分に日が落ちたように思っても、空だけ見るとまだ明るい場合が多い。もちろん、暗くする。

②と③は合わせて、「周辺を焼き込む」といった言い方も可能です。この「周辺を焼き込む」は、しばしば、夜景に見えなかった写真を一気に夜景っぽくする決め手となります。

撮影事例② 道頓堀商店街

次は大阪の繁華街・道頓堀商店街の人込みとお店の看板です。

道頓堀商店街(レタッチ後)
被写界深度が浅いので、ピントの位置を間違えると、全体がボケてしまうところだった。あまり差は感じないかもしれないが、電光式の看板は読みやすく、人込みは様子がわかるようにレタッチした。全体的にも、このほうが「夜の道頓堀商店街のにぎやかさ」がでたのではないだろうか。

夜間撮影のピント合わせは一層の正確さが求められる

奥行きを見せ、人が多くいるのがわかるように、3段で高さ80センチほどの脚立の上に乗って撮りました。

撮影データからは、「感度を上げて、露出は絞ったほうがよかったか」の反省があります。「被写界深度を深くする(ピントがあっているように見える前後の距離を伸ばす)」が目的です。被写界深度は絞りの開け方で決まり、開放(絞りを最大開けた状態)では最も浅くなります。

ただ、そうするとあまり出したくない、雑踏の人の顔もくっきりと見えてしまいます。「このぐらいがちょうどいいか」とも思います。

ほかの理由でも、夜間の撮影は被写界深度を浅めにせざるをえない場合が少なくありません。今のデジカメは高感度までカバーし、多くの場合、手ブレ補正まで搭載しています。しかし、それでも暗いところで撮るからには、レンズを開放近くで使う必要も出てくるのです。

「ピント合わせは正確にやらなければいけない」という話です。この写真の場合は、「牛角・焼肉酒家」の距離で合わせています。浅い被写界深度で手前と奥までぼかさずに見せるには、やや前目にピントを合わせるのが正解です。というのは、被写界深度の広がる前後の距離は、手前が1とすると、奥は2の比率だからです。

明るいところと暗いところの補正は「シャドー / ハイライト」

レタッチとしては……

①全体のコントラストを上げる

②「シャドー」を起こし、「ハイライト」を下げる

③周辺部を焼き込む

……をやっています。

①についていえば、フィルムの時代も今のデジタルもカメラが最も得意なのは、太陽光です。人工の光では光景をうまく拾えない場合があります。そのせいで、今回もコントラストが低くなっていました。

②の「シャドーを起こす」は「真っ黒につぶれそうな部分(黒つぶれ)を明るくする」の意味です。「ハイライトを下げる」はその逆で、「白く飛んでしまいそうな部分(白飛び)を暗くする」です。

これで、人込み部分が明るくなりました。一方、電光式の看板も白い部分が落ち着き、文字部分も読みやすくなりました。Photoshopでは、「イメージ」→「色調補正」→「シャドー・ハイライト」でこの機能を呼び出せます。

③は、人のにぎわいも見せたいのもあって、周囲の焼き込みはごく軽くで済ませています。

撮影事例③ 夜の白梅

次は、街灯の光も薄っすらとしかないなかでの、ウメの花の写真です。

ストロボは奥行きのあるものを照らすのは苦手

夜間撮影の必需品といえば、ストロボです。特にフィルム時代にはそうでした。

フィルムからデジタルに移行し、フィルム時代には考えられなかった高感度までカバーするようになりました。ストロボ、なかでも外付けストロボとは無縁の人も増えました。

しかし、本格的な夜間撮影ではまだまだ必要です。理由のひとつは、「カメラは太陽光を最も得意にしている。逆に電球色のLEDなどは苦手で、自然には写せない。ストロボの放つ光は太陽光に近い」です。

このストロボが苦手としているのが、「奥行きのある被写体」です。

ストロボの発光部の面積は狭く、ほとんど「点」といっていいぐらいです。1メートル先で縦横1メートルの範囲(1平方メートル)に当たった光は、2メートル先では縦横2メートル(4平方メートル)に広がります。単位面積でいえば当たる光の量は4分の1です。「距離に従って、等比級数的に減っていく」わけです。

「ストロボで届く光の量はちょっと離れるだけですぐ減る。急激に暗くなる」と覚えておくといいでしょう。

できるだけストロボ以外の光も利用する

対策のひとつは、「光はストロボのものがメインでも、できるだけほかの光も利用する」です。

直近に街灯はなく、光は薄っすらとしか当たっていませんでした。それでも利用せざるを得ず、シャタースピードは1/15秒まで遅くし、感度はISO3,200まで上げています。

手ブレ防止を考えると、絞りは開放にしてシャッタースピードを上げたいところです。しかし、一輪ごとの花も奥行きがあるので、少しは絞って被写界深度を深くしないといけません。結局F4.4で撮影しました。

発光量はカメラ・ストロボ任せのTTL調光ですが、ストロボでの設定で1段分(光量としては半分)落としました。「適正の光量では明るすぎて夜景には見えない」が理由です。

また、ストロボは「写真撮影のためにわざわざ入れた人工の光」です。存在感を減らすほうが自然な写真になります。「ほかの光も利用する」「発光量を1段分落とす」はそのための工夫でもあります。

補正ではHDRも利用してストロボの弱点を補う

今回使ったフジフイルムのカメラには、「HDR(ハイダイナミックレンジ)」の機能があります。撮影時にカメラで設定するか、RAWからの現像時に調整します。

細かい話は避けますが、先の「道頓堀商店街」で使ったの「シャドーを起こす」「ハイライトを落とす」と同じように、「黒つぶれ・白飛びを回避する」の手段です。これで、一番手前の花びらが白飛びするのを抑え、さらに奥の枝も明るくしました。

しかし、これだけでは不十分でした。最も手前の数輪を範囲指定し、この分だけさらに暗くしました。撮って出しと比較していただくとおわかりいただけるでしょう。撮影時に多少工夫しても、ストロボの光は近いところに強く当たるのです。

撮影事例④ 特急「サンダーバード」

最後に、動いている乗り物を夜景で撮る方法です。

シャッターが閉まる直前に発光する「後幕発光」

ストロボは1段分発光量を落としたつもりでしたが、やや強めでした。

このときは、「後幕発光(後幕シンクロ)」で使っています。

通常は「先幕発光(先幕シンクロ)」で、シャッターボタンを押し、イメージセンサーの前を覆っている幕が全面的に開いた瞬間に発光します。

この先幕発光ならば、メインの被写体である車体は幕が開いた時点のところで写り、幕が閉まるまでの間は移動します。その間、写るのはヘッドライトぐらいです。その光跡が突き出したように残ります。

後幕発光はその逆です。幕が開いた瞬間にヘッドライトが写り始めます。それが移動し、一番最後にストロボが光って車体も写ります。ヘッドライトの光跡は車体のなかに入り、この方が自然な感じです。

この後幕発光は慣れるのに少し時間がかかります。今回はシャッタースピードが8分の1秒でした。シャッターボタンを押して、「あれ、光らないな」と思ってから、タイミングが外れたところでようやくピカっとくる感じです。

大きい地形の夜景撮影にベストの時間はたそがれ時

この写真で欠かせない2大要素は特急の車体と琵琶湖の湖面です。

車体はストロボが届く距離だったので、この光で写せます。

当然、湖面にはストロボは届きません。そのため、露出とシャッタースピード、感度は湖面に合わせて設定します。夜景であるのを考えると適正露出では明るすぎます。2段程度のアンダーでいいでしょう。そうして選んだのが今回の撮影データでした。

撮影したのは、3月半ばの午後6時半ごろです。「たそがれ時」とか「マジックアワー」といわれる時間帯です。今回は湖でしたが、山や空など大きい風景が入る夜景には、少しだけ光が残っているのがベストです。

これを逃すとあとはまっ暗やみにしかなりません。こうなると、いくら高感度に強い今どきのデジカメでもベタッと黒い面が広がるだけで、絵にするのは無理です。どれだけ補正しても、図柄は起こせません。

レタッチは車体付近と背景の湖を分けて考える

レタッチのメインは、最初の「道頓堀」と同じです。周辺を暗くすることで、夜っぽい雰囲気を高めます。

少し迷うのは湖の部分でしょうか。明るめに出したいところですが、そうすると夜の光景ではなくなってしまいます。

また、車両の先頭部分やそれよりも前の線路はストロボの力で写っている分です。特に線路部分は、ストロボに近い分、明るくなりすぎているので暗く落とします。

機材とスキルが必要だが、魅力的な光景も待っている

今回は主に「夜景は撮った時点で終わりにならない。レタッチが必要」との話をしました。

少しだけ出てきましたが、外付けストロボがないと撮れる物が限られてしまいます。もちろん、持っているだけではダメで、使いこなせないといけません。三脚もあったほうがいいでしょう。

何よりも、レンズも選ばなければいけません。ところが、初心者の大半は標準ズーム1本か、プラスして望遠ズームを1本持っているだけです。これらのF値は大きめです。「レンズの口径が小さい」とほぼ同じ意味で、一遍に光を取り込めません。「夜間撮影に向いていない」とお考えください。

このように、夜間撮影にまで踏み込むには必要な機材とスキルがたくさんあります。

逆に考えれば、「いくらかの機材とスキルがないために、昼間とは違う魅力的な風景を指をくわえて見送っている」ともいえるのではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


まだコメントがありません。