スマホでもOK〜ガラスを反射させずに、ショーケースの中身を撮る方法
ケーキショップ、和菓子屋、カフェなどのホームページを作ったり、取材をしたりする際、かなりの確率でガラスケースの中身を撮る必要がでてきませんか?
肉眼ではきれいに見えていたつもりでも、実際に撮ってみると、前面のガラスが邪魔をする場合が少なくありません。百発百中とまではいかないものの、ありきたりの撮影小道具をほんの少し工夫して使えば解決します。
目次
最小限でよければ小道具の費用は5,000円
必要なものとその値段を先に挙げておきましょう。というのは、デジカメがフィルムカメラに取って代わり、それどころかスマホのカメラしか知らない人が増えました。この変化に連れ、写真を撮るための小道具類がまったく視野に入っていない人も珍しくなくなりました。今回の小道具類も高いハードルに感じる人もいるかもしれません。まずはそれを解消しておきます。
撮影用LEDライトさえあれば始められる
まず、小型のものでいいので撮影用LEDライトを買いましょう。ただ、ショーケースなどの中を撮る場合、被写体に対して至近距離で使う場面が多く、1個では照射範囲が十分でない可能性があります。2個必要です。
値段はたいしたことはありません。1個1,000円のものでも十分に実用に耐え、2,000円ぐらいから製品の選択肢が増えます。2個ですから、予算としては5,000円を見ておけばいいでしょう。
また、LEDライトは定常光(つけっぱなし)なので、シャッターと同調させる必要はありません。「スマホでの撮影にも使える」ということです。これはストロボにないメリットです。
ストロボもあれば対応できる場面が増える
フィルムカメラ時代には必需品だったのに、デジカメ時代になってすっかり影が薄くなったのが、外付けのストロボです。ショーケースの撮影ではあったほうが対応できる場面が増えます。
ガイドナンバーは35以上のものを
デジカメのイメージセンサーがフィルムでは考えられなかった高感度までカバーするので、外付けストロボを持たない人が増えました。
しかし、ストロボが必要なのは周囲が暗いときだけではありません。「画面の中の明暗の差を小さくする」「室内照明だけだと発色が悪いのでカバーする」などの役割があります。今回もそれらの役割のうちのひとつです。
今回の使用方法ならば、そこそこのパワー(発光量)が必要です。発光量は「ガイドナンバー」で表されていて、一応のめどとしては35以上のものを選んだほうがいいでしょう。
NikonやSony、Canonの純正品で、この条件を満たす製品は3万円前後か、それ以上します。予算に限りがある人は、「サードパーティ」と呼ばれるNEEWER製やGODOX製も選択肢に入れましょう。純正品とほぼ同じスペックの製品が半分程度の値段で手に入ります。
ただし、数千円程度のサードパーティは選択肢から外してください。発光量の調整はマニュアルだけの製品が多く、カメラ任せの撮影ができません。使いこなせるのは写真撮影の基礎がわかっている人だけです。
専用の延長コードもあったほうがいい
ストロボはカメラから離して使えます。ただし、「専用の延長コード」か「リモコン(電波式の送信機・受信機)」が必要です。今回もその準備をしたほうがいいでしょう。
コードは2、3メートルのもので、3,000円、4,000円といったところです。リモコンはストロボとの組み合わせ次第で必要な送信機・受信機が変わります。なかには受信機を内蔵しているストロボもあり、安く済めば7,000円か8,000円、高ければ2万円か3万円です。
まずは、コードを手に入れましょう。NikonはNikon用、CanonはCanon用を選ばないといけません。ただし、電極の数も端子の形状も同じなので、FujifilmはCanon用が使えます。
三脚があればライトスタンドとしても使える
たまにですが、なんでもかんでも三脚を使う人がいます。ちょっとアングルを変えるだけでも三脚をセットし直す必要があり、足手まといになるだけです。
ただ、今回は「アングルはすでに決まっている。撮影用LEDライトの位置や発光量を変えて何度も撮る」も考えられます。三脚も用意し、アングルは動かないようにしたほうがいいかもしれません。
三脚にはもうひとつ、別の使いみちがあります。照明を設置するためのライトスタンドにもなるのです。ストロボはもちろんのこと、延長コードのストロボ側、大半の撮影用LEDライトには三脚穴がついています。三脚にもセットできます。
三脚で最もよく見られる最大高は、人の目線あたりの160センチ前後です。ライトスタンドとしても使うのならば、もう少し高いほうがいいかもしれません。具体的には200センチ前後です。この程度ならば選択肢もいくらかあり、値段も「目線の高さ」の同等品とそう変わりません。
値段はピンキリです。しかし、今回の使用目的を果たす程度の製品に限っていえば、予算は5,000円前後か、せいぜい1万円台をみておけばいいでしょう。
スチュエーション別、具体的な撮り方
ようやく、実際の撮り方です。繰り返しになりますが、撮影用LEDライト2個があれば始められます。カメラはスマホのものでもOKです。あとのストロボなどは対応力を上げるためのものです。
いくつかのパターンを紹介しますが、考え方はどれも同じで、しかも、シンプルです。「被写体とカメラの間にあるガラスには光を当てず、ケースの中の被写体のみに光を当てる」しかありません。
被写体の真上が透明な場合
まずは、写したいものが和菓子やケーキなどの商品で、その商品のすぐ上はガラスなど透明な板の場合の撮り方です。
LEDライトを天板に載せる
天井のガラスの上に撮影用LEDライトを置くだけです。2個用意したはずですので、組み合わせも考えながら、被写体に最も適切に光が当たるように置く場所を選びます。
周囲の光が前面のガラスなどに映り込んでいる場合は、LEDライトのパワーを上げます。映り込みは薄くなるはずです。これは、ほかのやり方でも共通です。
ストロボを天井バウンスさせる
「天井バウンス」とは、カメラボディー上部につけたストロボの発光部を上に向け、天井に光を反射させるやり方です。「天井……」と名前はついているものの、角度次第では反射させる相手は側面の壁なども考えられます。
ただ、天井などはあっても高すぎて、弱い反射光しかショーケースに届かない場合もあります。あるいは、色が白やグレー以外の場合、その色の影響を受けるかもしれません。
こういった場合は、なにか白いものをショーケースの上にかざし、そこに向けて発光するといいでしょう。発泡スチロールの板でもいいですし、被写体が小さいものならば、コピー用紙でも事足りるかもしれません。
ストロボを被写体の上で発光させる
延長コードやリモコンの出番になるのは、このパターンです。天井のガラス板の上にストロボを置き、発光部を被写体に向けます。ストロボは、一瞬だけとはいえ強力な光を放つので、前面のガラスに映り込みがあっても、撮影用LEDライトなどよりも消せる可能性が高くなります。
このときに1点注意が必要です。今のストロボの多くは、レンズの広角・望遠に合わせて照射角も自動的に変化します。延長コードやリモコンを使っていても同様です。望遠系レンズでの撮影の場合、ごく限られた範囲しか光を当てません。被写体も一部しか照らされない可能性があります。照射角の自動調整はオフにし、手動で広角側の照射角になるようにしておきましょう。
三脚も用意しているのならば、ライトスタンド代わりにして真上近くからストロボを発光するのも、ほぼ同じ効果がえられます。離せば離すほど影が柔らかくなり、天板のガラスに直接置くよりも自然に写るかもしれません。
被写体の真上が透明でない場合
ショーケースの天板はガラス製とは限らず、上から照射できない場合もあるでしょう。あるいは、棚が2段以上あれば、最上段以外にはこれまで紹介した方法は使えません。
その場合、被写体とカメラを隔てているガラスに撮影用LEDライトを貼り付けます。もちろん、カメラの画角に入らないような位置を選びます。真ん中を空けることになり、左右どちらかだけでは十分に照らせません。やはり、2個必要になるのです。
LEDライトは軽いので粘着テープで十分に固定できます。もし、手伝ってくれる人がいれば手で押さえていてもいいでしょう。私の場合は、厚みのある両面テープを使っています。この「厚み」がクッションになり、ガラスを傷にする心配もなくなります。
ショーウインドーや水槽でも応用が利く
具体的な方法は示せませんでしたが、これらのやり方は店頭のショーウインドーや水槽で泳いでいる魚にも応用できます。「被写体とカメラの間にあるガラスには光を当てず、ケースの中の被写体のみに光を当てる」という点で、同じ話ですから。
また、今回用意した撮影用LEDライトやストロボはほかのところでも役に立つ可能性が大です。
一例だけ挙げておくと、「室内で撮影したが、そこでは電球色のLEDライトが使われていて、写真がちゃんと発色しない。濁ったような色になる」といった場面が考えられます。こういったときは、撮影用LEDライトやストロボを補助的に入れます。これらの基本となる光は、カメラにとって理想的な太陽光に近い性質を持っています。
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