あなたが撮ったスイーツや料理の写真がおいしそうに見えないわけ・その2〜光源の種類と位置ごとの写り方の実例
「その1」では、「スイーツや料理の写真は撮ったままではダメだ。レタッチして初めて完成する」といった話を書きました。こちらでは、画像データが光源によってどう変わるかの実例を挙げます。
レタッチするのが大前提になるのならば、画像データは撮って出しでの見た目よりも、「どれだけ補正しやすいか」「補正した結果がいいかどうか」の方が重要です。そのため、レタッチ後の写真をメインにお見せしています。
撮るものに当たっている光の状況を気にする習慣をつける
今さらながらの話です。しかし、現実にはまったく気にしていない人も少なくないのが「光源」です。
撮影時には気にしないといけない光源
その光源のチェックポイントを最もシンプルにいえば、「位置」と「波長」です。
「位置」とは、順光・逆光などを指します。
「波長」は自然光(太陽光)か人工光かで異なるだけではありません。太陽光でも一様ではありません。人工光も同様ですが、身近にあって気にしないといけないものならば、LEDの「電球色」「昼白色」「昼光色」がその代表です。
肉眼ならば光源の位置も波長も気にせずに見ている
人間の目と脳は非常に柔軟性に富んでいます。
一部だけ光が明るく当たりすぎて真っ白になっていようが、逆に光が当たっていなくて真っ黒であろうが、さして困ることはありません。
目を凝らして見るなどして、逆光によるコントラストの不足もカバーできます。
あるいは、当たっている光がオレンジがかっていようと真っ青であろうと、白いケーキは白いケーキ、赤いトマトは赤いトマトと見て、記憶にもとどめます。
カメラに対しては適切な光を用意してやる必要がある
カメラも、順光・逆光の違いや、光の波長の違いに対してある程度は撮影時の設定で対応が可能です。しかも、カメラ任せのオートでも色やコントラストを調整します。あるいは、撮影後にPhotoshopなどで補正もできます。
しかし、肉眼には及びません。写真として残すと嫌な影がでいていたり、色がおかしかったりする場合がしばしばあります。写真撮影初心者ならば、それらの欠点は撮影時には可能性さえ想像せず、写真で見て初めて気が付くでしょう。
もし、もう一段きっちりとした写真を残したいのならば、条件がいい場所で撮るか、条件がよくなるような光源を用意する必要があります。
ストロボや撮影用LEDライトなど別・光源の位置別でのブツ撮りの写り方
ここからは、光源の種類や位置ごとの写り方の実例を挙げていきます。
外付けストロボや撮影用LEDなど複数の光源で調整
最初に目指すべきレベルの写真を挙げておきます。いわば、「模範解答」です。
以後の写真は、「これと比べてどうか」でご判断ください。
ただ、これを撮るために外付けストロボの光を撮影用アンブレラで反射させた上、補助的に撮影用LEDも使っています。喫茶店などでは、無理とまでいかないまでも、「ぱっぱとやってしまう」となはらない手間です。
また、これも撮って出しでは、コントラストや色はしっかりしていません。Photoshopでレタッチしています。このレタッチの必要性については、「その1」で解説しました。
SNSではよく見かける撮り方
「SNSではよく見かける」としましたが、実際のところ、「光源には関心を払わず、でき上がりの写真がよくなくてもアップされる場合が多い写真」とお考えください。
自然光と室内光のミックス
窓からは光が差し込み、室内は室内で電球色などのLEDが点灯している状態です。SNSでアップされている写真で最もありがちなパターンといっていいでしょう。
ほかの風景などと一緒になり、ショートケーキはそのごく一部ならば問題ありません。しかし、ブツ撮りとしては失敗です。肝心のショートケーキの色も質感もよくわかりません。
また、その場任せの光源になるために、どういった素材としての画像データになるか予測しきれません。
主な光源が電球色のLED
最初の「自然光と室内光のミックス」以上に、SNSでありがちなパターンかも知れません。電球色LEDのオレンジがかった光に照らされています。電球色は「落ち着いた雰囲気が出せる」「食べ物がおいしく見える」などの理由で、喫茶店や食堂などでよく使われています。
2枚の写真を比べていただくとわかるように、この程度の色の偏りならばレタッチで直せます。
ですから、SNSなどにアップする場合でも、「おいしかった」と本気で伝えたいならば、レタッチは必須(ひっす)です。仕事として撮った写真ならばなおさらでしょう。
内蔵ストロボを照射
ミラーレスカメラの内蔵ストロボを使いました。撮って出しではメリハリがありませんが、これはレタッチでかなりのところまで直せました。
レタッチしても立体感はありません。ただ、喫茶店などで撮ればれば、天井からの照明や外からの光なども当たって、もう少しはましな写真だったはずです。
内蔵ストロボでは天井バウンスもできないために、立体感の改善はできません。また、この程度の距離ならば大丈夫ですが、パワーも知れています。そのために、中途半端な存在とみなされ、デジカメの上位機種では省略されています。
それでも、「ほかの光をメインにして、内蔵ストロボの光は補助的に使う」ならば、重宝します。ただ、それにはある程度の知識とスキルが必要です。
外付けストロボのいろいろな使い方
「その場の光の状況を完全するために、自分で光源を用意する」の代表が外付けストロボです。ただ、不自然な写り方になってしまう場合も少なくありません。工夫して使う必要があります。
クリップオンで使う
外付けストロボをボディー上部に直接取り付け(クリップオン)、直接光を当てています。
色の出方は、先ほどの内蔵ストロボよりはスッキリしています。
しかし、立体感のなさは大差がありません。内蔵ストロボにくらべ発光部は10センチ程度上に行っただけなので当然でしょう。
色やコントラストはレタッチで改善するものの、内蔵ストロボと同じことがいえます。影らしい影が出ないので、立体感はありません。
「せっかく外付けストロボを持っているのに」といわれても仕方のない使い方です。
天井バウンス
今回は、2メートル半ほど上の天井に光を当てました。天井には白い壁紙が貼ってあるにもかかわらず、撮って出しでは赤っぽい色になっています。
ストロボの光の性質は太陽光に似ています。ですから、壁紙の影響と見ていいでしょう。当然、色調補正しました。
外付けストロボの代表的な工夫しての使い方です。ただ、ストロボの中には、発光部の方向を変えることができない製品もあります。また、パワーが足りずに、十分に光が回らないこともありえます。「外付けストロボならばどれでもいい」とはならないのです。
また、写真をご覧いただくとわかるように、よくいえば優しい光、悪くいえば立体感があいまいになる光になっています。「ほかに手段があるのならば、そちらを優先したい」といったところです。
白い下敷きでバウンス
ストロボの発光部を上に向け、その30センチほど上に白い下記事をかざして、ここで反射させました。撮るものの大きさによってはこれでも十分に「バウンス」になります。
先ほどの天井バウンスに比べこちらのほうが、自然な影が出ています。立体感もあります。今回は発光部を真上に向けました。しかし、左右にずらすことで、影の出る方向もある程度調整できます。
室内全体を光らせてしまうこともありません。取材先での撮影で、大げさな機材も使えない場合に最もおすすめの撮り方です。
コピー用紙でバウンス
先ほどの白い下敷きの代わりに、コピー用紙でバウンスしました。撮って出しが少し赤みを帯びているものの、ほぼ同じ結果になっています。
おそらくは、発泡スチロールの板など、白いものならば何でも使えるでしょう。シャツなど白い布なども選択肢に入るのではないでしょうか。
白い下敷きにしろ、コピー用紙にしろ、天井バンスよりもむしろいいぐらいです。
質感まで気にしないと、おいしそうなテーブルフォトにはならない
スイーツや料理のブツ撮り、いわゆる「テーブルフォト」ではほかにも、「どこにピントを合わせるか」「構図は」などもチェックしながら、シャッターを切らなければいけません。
これらは、写真一般と同じです。中でも「おいしそうに見せる」ためには必要になるのが、コントラストと色です。質感を決める大事な要素なのです。
本格的に照明を当てるのならば、バウンス用の傘などいくつかのツールが必要です。しかし、取材現場ではなかなかそこまでやるのは難しいのではないでしょうか。
せめて白い下敷きの1枚でも用意しておくか、その場にある白いものを利用しましょう。これだけで、コントラストや色はけっこう変わるはずです。
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