「SEO対策にも強い」はセールストーク!? ホームページ制作会社自身もできていない?
ホームページ制作会社の案内で、高い確率ででてくるフレーズに「SEO対策に強い」があります。しかし、SEO対策でやらなければいけことは無数にあります。実はホームページ制作会社がタッチできるのはごく一部です。
「ならば、その一部についてはしっかりとやっているのだろう」と思いたいところです。しかし、「その一部」についても、実際には「玉石混交」というしかない状態です。
SEO対策を本当にやっているのか・理解しているのかをチェックしてみます。材料は、ホームページ制作会社自身のトップページの見出しです。
目次
依頼主からはブラックボックスでしかないSEO対策
ホームページ制作の中身は、依頼主にはわかりにくいものばかりです。普段の生活では触れることのないものばかりですから、無理もないところでしょう。なかでも、縁遠いのがSEO対策ではないでしょうか。
あいまいで範囲が広い「SEO対策」
SEO対策は最も簡潔にいえば「Google検索で上位に表示させるための方法」です。「SEO」は「Search Engine Optimization」の略で、訳すと「検索エンジン最適化」です。
ただ、検索の上位になり、訪問数が稼げたとしても、ホームページ運営者にメリットをもたらさないようでは意味はありません。「通販サイトなのに、情報だけ得て訪問者は帰ってしまう。商品はまったく売れない」が典型です。この改善策まで含めて「SEO対策」とするのが一般的です。
SEO対策としてやる内容
一口にSEO対策といいますが、項目としては次のようになります。ここまでやって、一式です。
技術面での対策
ホームページの全体、あるいは部分部分の構造化
モバイルフレンドリー化
ページの表示速度の改善
HTTPSの導入 (SSL化)
コンテンツ面での対策
キーワードの適切な選定
高品質なコンテンツの作成
定期的な更新
そのほか
被リンクの獲得
SEO対策ツールの活用
SEO会社がかかわるのは「技術面での対策」程度
大半のホームページ制作会社ではコンテンツ(文章・写真)に対してはノータッチです。依頼主自身が持ち込まなければいけません。なかには、「自社でコンテンツも用意できる」としているところもありますが、ライターやカメラマンの修行をした人間ではなく、社内で役割を振られただけの人間が担当します。品質は推して知るべしです。
結局、ホームページ制作会社がタッチできるのは「技術面での対策」ぐらいしかありません。これだけでも、「制作会社が『SEO対策に強い』とアピールするは僭越(せんえつ)だ」とわかります。
見出しはページごとの構造化のツール
SEO対策は一般の人にはわかりにくいものばかりです。ただ、そのなかではまだしも可視化しやすい「見出し」を題材に、SEO対策を考えてみます。
ホームページにとって不可欠な検索エンジンへの手助け
ホームページ制作でいう「構造化」とは、「Webページの内容を整理し、検索エンジンやユーザーにとって分かりやすく理解できるよう、情報に意味を与えること」です。主に「クローラー」や「ボット」と呼ばれる検索エンジンがそのサイトを理解しやすくするためにやります。
様々なものが含まれますが、トップページを文字通り一番上の階層にして、その下に「商品ページ」「ブログ」「お問い合わせ」を並べるのもそのひとつです。
ページのなかにはタイトルと見出しで階層を作る
そして、ページひとつひとつのなかにも階層をつくります。まず、「ページタイトル <1>」があり、その下にぶら下がるようにして「大きい見出し <h2>」があり、さらにその下に「2番めに大きい見出し <h3>」と続きます。
「ページタイトル <1>」については、「複数あってもよい」との見方もあるようです。しかし、「ページ全体を象徴する言葉」という趣旨から考えて、ひとつにしておくのが自然でしょう。
また、「タイトル <1>」の下にいきなり、「見出し <h3>」「見出し <h4>」がくるのは避けます。「構造が崩れている」証拠でしかありませんから。
見た目でタイトルの大小がついているだけではNG
「ページタイトル <1>」や「大きい見出し <h2>」は、Wordなどでやるように、単に文字が大きかったり、太字になっていたりで区別するだけではいけません。
インターネットに表示するための言語であるCSSで、「<1>と</1>でくくる」といった作業をやる必要があります。そうしないと、検索エンジンにすると見出しかどうかの区別がつかないのです。
ホームページ制作会社のトップページをチェックしてみた
ここまでをご理解いただいた上で、実際に「ホームページ制作会社が用意している自社のホームページ」のトップページをチェックしてみましょう。
材料に使ったのは、「SEO対策に強いWeb制作会社」といったタイトルのサイトで紹介されている7社です。
見出しの抽出には、「Web ToolBox」の「見出し(hタグ)抽出」を使いました。
1社目・株式会社I
<h1>が5つあります。通常だったら<h2>にするような見出しの文言です。
ロゴマークに<h1>を当て、その「代替テキスト」をタイトル化するやり方もないわけではありません。しかし、このホームページではそれでもありませんでした。
結局、「ページタイトル」はありません。検索エンジンに対し、「このページでは○○について書いています」との情報も与えていない状態です。
2社目・N株式会社
<h1>から<3>までの順番には乱れはありません。しかし、<2>が17も使われています。同じ重要度の見出しがダラダラ並んでいるわけで、これはこれで「構造化」というには少し無理があります。
また、<2>がふたつ、空欄になっています。これは、あまりにページ内のパーツを目まぐるしく動かしているせいで、表にでていない時間があるのでしょう。また、そのようなパーツに<h2>を当てるのは間違っています。「何でもかんでも<h2>を使った」がここからも見て取れます。
3社目・S株式会社
ごくあっさりした構成です。実際にページを見ると、イラストなどを多用して見栄えがするようになってはいます。しかし、文字情報としては薄めでした。
ただ、ページ数の多いホームページだったので、グループ分けして、そのグループごとに実質上のトップページがあるようにしていました。
「中小規模のホームページはまねできないが、これはこれでありなのかも」といったところです。
4社目・K
3社目ほど極端ではありませんが、同様のことがいえそうです。
5社目・T
7社見た中では、ここが一番デタラメでした。
まず、ページタイトルの<h1>がありません。最初の<h2>に「○○にする企業です」と、自己紹介のようなフレーズがあります。本当はこれを<h1>にしなければいけなかったところでしょう。
その後も、<h2>のあとに<h4>がくるかと思えば、そこから<h3>がでてきます。検索エンジンはかなり振り回されるでしょう。もちろん、SEO対策としてもマイナスです。
6社目・株式会社P
このあたりで、「本来あるべき姿」といえるのではないでしょうか。
7社目・株式会社G
4層目の<h4>まであるのが、6社目との違いです。こちらもきれいにまとめられていると思います。
当然、お客のホームページでも見出しをいい加減に作る
結局、まともなのが2社、これだけでは判断できなさそうなのが2社、明らかに失敗しているのが3社でした。
「会社の顔」といわれるのがホームページです。そのホームページのなかでも「顔」のトップページで失敗するのです。「気を抜いた」は考えにくいところです。実力がないのです。
当然、お客さんから依頼されたホームページでも失敗するでしょう。確認のために、1社目の「株式会社I」が「制作事例」としてあげているホームページの見出しを同様にチェックしてみました。
意地悪く、特にダメなのをわざわざ探し回ったわけではありません。しかし、ここまで見たなかでもなかった、まさかの「見出しは一切なし」でした。
ちなみにこのホームページを持っている会社は東証1部上場にしているだけではなく、その株式銘柄は「日経225」に採用されています。どうみても、「日本を代表する大企業」です。
アウトソーシング一般にある話 ホームページ制作の丸投げも危険
今回調べたのは7社だけです。そのうちの3社がまったくダメといっても、統計として見るにはサンプル数が少なすぎます。ただ、私のライター兼カメラマンとしての経験のなかで見ただけでも「見出しは一切なしのホームページを作られしまった。だけど、依頼主はまったく気がついていない」といった例はいくつもあります。
「特段に運が悪くなくても、デタラメなホームページ制作会社に当たる可能性はある」と覚悟しておくべきです。
もし、制作業者が「SEO対策に強い」とアピールしても、いわゆるセールストークとみなさなければいけません。どんな魚屋でも「新鮮です」といい、どんな学習塾でも「成績が上がる」とアピールするのと同じようなものです。
結局、アウトソーシング一般と同じです。「丸投げはしない。相手や相手のやった仕事を評価できる程度には、自分の側でも勉強しておく」ぐらいしか、対策はなさそうです。
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