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ホームページの依頼主も知らないと怖い著作権〜制作会社もわかっているとは限らない

黒板(著作権の説明)

「著作権」の単語を知らない人は、まずはいないでしょう。しかし、その中身を理解しているでしょうか。そもそも、著作権を規定している法律の条文を一度も読んだ経験のない人も多いのではないでしょうか。

ホームページ制作の関係者も、世間一般とそう違いはありません。著作権が関与する部分を丸投げにしたり、「制作関係者がチェックしているはずだ」と油断したりすると、大変な目に遭う可能性があります。

文章でも同様に著作権侵害は起こります。今回は特に写真を中心にお話ししましょう。

著作権無視のホームページは地雷を抱えているようなもの

著作権違反をしているからといって、すぐに問題になるのは稀(まれ)なようです。たいていは、著作権を侵害された側からいきなり突き付けられて、対応に追われる羽目になります。著作権について後ろ暗いところがないようにしておかないと、地雷を抱えているのと同じです。

学校でも写真やイラストの著作権を侵害して裁判になっているのは珍しくない

中学教員、イラストを無断で学校HPに 市が作者に27万円賠償へ』(2023/11/28 朝日新聞DEGITAL)

ネット上のイラスト「無料と思った」 学校だより掲載で著作権侵害、賠償金11万円 白石町の小学校』(2023/01/10 佐賀新聞)

「夏のイラスト フリー」で検索したのに…著作権者から賠償請求 学校だよりやHP掲載、明石市の小学校』(2023/5/26 神戸新聞NEXT)

いずれもイラストの話ですが、これが写真でも同じ話です。これらは学校という特殊な場所での著作権侵害なので、話題性があり、新聞が取り上げただけです。また、請求された金額も30万円程度までで済んでいます。

一般企業が著作権を侵害して裁判になった例もいくらでもある

これが個人や企業での著作権侵害となると、「どれだけあるかわからない」「賠償金もいくらになるかわからない」といったところです。

最高裁が運営するサイト「裁判所」のなかに、「裁判例検索」が用意されています。

ためしに、「無断転載」「写真」などで検索してみましょう。いくつも企業のホームページ関連の裁判例がでてくるはずです。なかには賠償金の請求額が1千数百円になっている例もあります。大半はそのまま認められず、実際に判決で言い渡される金額は数十万円程度になるようです。とはいえ、気分のいいものではありません。また、受けて立つ側にも裁判費用は必要になります。

「制作会社に任せたホームページだから大丈夫だ」ともならないのも、これらの裁判例からもおわかりいただけるのではないでしょうか。

さらに覚悟しておいた方がいいのは、「裁判になるのはよほどのこと」という点です。裁判になる前に当事者同士の話し合いで決着しているものもあるはずです。「こういった例は話として聞こえてこないだけ」と考えていいでしょう。

賠償金より怖い? うまくいっているホームページの閉鎖

いくらかのお金だけで解決すればいいほうでしょう。

ホームページの閉鎖まで要求される場合もあるようです。要求はされなくても写真の大半が使えなくなり、自ら閉鎖の判断に追い込まれるかもしれません。

正直にいって、まともに会社やお店の業績に貢献しているホームページなど、たくさんあるなかのひとにぎりです。何の役にも立っておらず、放置状態のホームページであれば、閉鎖する羽目になっても「自分たちでは決断できなかったのが、いいきっかけになった」ぐらいで済みます。

きちんと運営できているホームページの場合はこうはいきません。もちろん、その会社の業種やホームページの性格によって違いはあるでしょう。下手をすると、「しっかりとやってくれていた営業所をひとつ閉鎖する」ぐらいのダメージになるのではないでしょうか。

再構築には、また時間と手間がかかります。一度キズを負ってしまうと、その意欲も持てないかもしれません。

写真の無断転載で、代金を請求されたときのシミュレーション

実際問題として、「無断使用の場合、どのくらいの金額を請求されるか」をシミュレーションします。

題材に使うのは、アマナイメージズです。

写真ストックサービスはいくらでも安いところがあります。無料のところも珍しくありません。しかし、「あくまでシミュレーションなので、高い方の金額を考えるべきだ」と考えました。また、料金システムが明確なのもアマナイメージズを題材に選んだ理由です。

ここまで準備しておいて、肝心の写真の請求額を以下の条件で考えます。

・無断転載を想定しているのはホームページ上の話なので、「Webサイト」用で考える

・自分のところが独占的に使え、よそとは共有しない「ライツマネージド」と、よそも使う可能性がある「ロイヤルティフリー」がある。これは値段の高い「ライツマネージド」で考える

・ライツマネージドのなかに、写真のクオリティー別に「Standard」「High Standard」「Rremium」とあるが、真ん中の「High Standard」としておく

・1年やそこら気が付かないままも十分ありえる。掲載していた期間は1〜3年とする

料金欄の当てはまるところを見ると、1枚92,400円(税込み)です。しかし、これは通常の手続きをした場合です。今回は「無断使用」で想定しています。となると、「無断使用した際の料金 該当使用料金定価の200%」が適用されます。

つまり、1枚無断使用しただけでも、請求される金額は184,800円です。50枚あまりで1千万円です。

各記事に複数枚の写真を使うのはむしろ普通でしょう。企業のホームページでしたら100や200のページ数はあってもおかしくありません。あくまでシミュレーション上ですが、写真の無断使用料だけで1千万円、2千万円、それ以上になるのは十分ありえる話なのです。

著作権に無知・無視のホームページ制作関係者は珍しくない

大半のホームページ制作会社で、写真と文章は依頼主自身が用意します。著作権違反はあなた自身が犯すかもしれません。「制作会社が、チェックし、アドバイスもくれるだろう」と思っていたら、それはまったくの油断です。

外注のWebデザイナーに著作権無視の指示を出す制作会社

2023年1月、2万人ほどのフォロワーを持つ、あるWebデザイナー出身のホームページ制作者がX(旧・Twitter)に……

デザイナー・Web制作者に質問です。「ウオーターマーク(透かし)を消して使って」と写真の指示を受けたことがありますか?

……とのアンケートを出しました。

細かい話は省略するとして、633人中、106人が「ある」「何度もある」でした。実に、約17%に当たります。

「ウオーターマーク」とは画像上に薄めに入れた文字などです。こういった場合は、ほぼ「©ペンタ工房」のように著作権を主張する文字や記号を指していると考えていいでしょう。それを消すのですから、たとえていえば、他人の自転車を盗み、泥よけあたりに書いてある所有者の名前を消した上で乗り回すようなものです。

また、話の流れから、指示を出すのはほぼホームページ制作会社と考えてよさそうです。

Xという限られた場での話です。「約17パーセント」が世間一般とどれだけずれているかはわかりません。しかし、ほかにも、著作権を無視して使うように指示された話は、しばしば流れてきます。「珍しくない程度にある」ぐらいはいっていいでしょう。

Webデザイナーや制作会社経営者らも著作権を知る機会がない

今どきのWebデザイナーの多くは、ネット上のレッスンを数カ月受けただけで、募集を見つけては応募します。レッスン期間は半年ならば長い方、短ければ3カ月です。それで採用されれば、Webデザイナーとしてのキャリアが始まります。

今、いくつかのスクールの案内をチェックしてみました。レッスンのなかに著作権にかんするものが少しでも入っていればマシな方です。全くないものもいくつも見受けられます。

著作権はデザインそのものの話ではないので、軽視されているのではないでしょうか。自動車でいえば、「エアバッグなど衝突時の安全装置はなくても、走るのには困らない」といったところでしょう。

これで始めた人のなかから、うまくやれた人が制作会社を興します。「それまでにたまたま“事故”に遭遇でもしていない限り、まだ著作権に無関心でいられる」と想像できます。

こういった人が経営する制作会社であれば、外注のWebデザイナーらに「ウオーターマークを消して使って」と指示しても、まったく違和感のない話です。

著作権のなかでも特に知っておくべき複製権と公衆送信権

ほかの法律同様に、疎漏がないようにと考えられているために、著作権も読んでいると頭が痛くなるような条文ばかりです。

そんな状況下では、公益社団法人著作権情報センターのホームページでは、著作権について簡潔にまとめられていると思います。

ホームページ制作関係者も依頼主も特に「著作者にはどんな権利がある?」については頭にただき込んでおく必要があるでしょう。

今回の話に密接に関係している部分をあえてピックアップすると次の2点です。

複製権(第21条):著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利 公衆送信権・公の伝達権

(第23条):著作物を自動公衆送信したり、放送したり、有線放送したり、また、それらの公衆送信された著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利

極限まで単純化すると、「著作物やそれをコピペ(複製)したものを、ネットにアップ(受信装置を用いて公に伝達)していいかどうかを決められるのは著作権者だけだ」という話です。

当たり前の話といえばそれまでです。しかし、「法律にもきちんと規定されている」と肝に銘じておきましょう。

制作会社がやった著作権侵害でも影響は避けられない

さらには、「法律をベースにして、実際にはどう運用されているか」まで踏み込んで、知っておかなければいけません。一例を挙げると、「著作権者の名前を同時に出してくれさえすれば、だれでも使っていい」と著作権者が指定している写真もあり、それはそれで問題ありません。

著作権の趣旨も、実際にはどう運用されているかも、ホームページ制作の依頼者も把握する必要があります。ここまでに見たように制作会社はこの面で必ずしもプロばかりとは限らず、丸投げではあまりに危険ですから。

「制作会社への警戒を怠ると、著作権侵害をしたのが制作会社でも賠償金請求の相手は自分になるかもしれない。自分が用意した写真ならばなおさらだ。せっかくのホームページも閉鎖に追い込まれるかもしれない」と覚えておきましょう。

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