安直な人選は失敗の元 幅広い専門知識が必要になるオウンドメディア担当者
更新が止まったり、更新は続いているものの何の役にも立っていなかったりするオウンドメディアは珍しくありません。
そうなってしまう場合の多くが、企業側の担当者が制作会社などの守備範囲を知らず、どう使っていいかも理解していないのが原因ではないでしょうか。「制作会社に発注した。サイトができあがった」で自分の仕事が終わったように勘違いしてしまうのです。
オウンドメディア担当者には様々な知識と能力が求められます。メディアの戦略立案力、コンテンツ企画力、データ分析力、プロジェクトマネジメント力などです。これらの能力を兼ね備え、外部の業者に対して主導権を握れる人材を、担当者に当てなければいけません。そして、そうした人材を継続的に育成していく体制づくりも欠かせません。
目次
なったあとからでも専門知識を身につけないとやっていけない
実際には、「オウンドメディアどころか、インターネットもろくにわからない。急に上司に指名された」で担当者になる人も少なくないでしょう。あくまで、理想ですが、次のような能力が必要です。走りながらでも身につけないといけません。
担当者にはマーケティングの知識も必要
【ウェブ専門知識】
- ・ウェブマーケティング、SEO、アナリティクスなどの知見
- ・オウンドメディアの運営ノウハウ
- ・技術的な側面(コーディング、CMS等)の理解力
【マーケティングの知見】
- ・マーケティング戦略の立案力
- ・ターゲット理解、顧客人側に立った発想力
【ライティング・編集能力】
- ・コンテンツ企画力、クリエーティブ能力
- ・分かりやすい文章作成能力
【プロジェクトマネジメント力】
- ・制作会社や外注ライターとの折衝、進行管理
- ・関係部署との調整力
【熱意とマインドセット】
- ・オウンドメディアへの情熱と継続的改善意欲
- ・デジタルシフトに前向きな姿勢
一般的なオウンドメディアなら2、3人は必要
担当者はこれだけのことをやらなければいけないのですから、2人や3人必要です。
ただ、小規模なサイトで更新も頻繁にしないのであれば、1人で済むかも知れません。あるいは、企業によってはそれ以上人数を割きようがない場合あるかも知れません。もし、1人しかいないのならば少なくとも専任にする必要があります。
また、更新が頻繁で、コンテンツ(原稿・写真)を社内で用意するのならば、複数名の編集者やライターまで必要になるでしょう。
もちろん、そこそこの人数を当てたところで、外部の専門家(SEOコンサル、ウェブ解析者など)の利用は不可欠です。
担当者の上司にも欠かせない専門知識
こうやって見るとわかるように、オウンドメディアの担当者はだれがやってもいいわけではありません。にもかかわらず、いい加減な人選をし、人数も十分に当てていない企業が大半です。少なくとも私(ペンタ工房・柳本学)がかかわってきたオウンドメディアの多くがそうでした。
これは、担当者の上司の失敗です。そういった上司の典型的な姿は次のとおりです。
- ・オウンドメディアに求められるスキルを把握できていない:マーケティング知識、ウェブ解析力、コンテンツ企画力など、担当者には必要な幅広い知識と能力が必要なのに気がついていない。
- ・デジタル人材の重要性を過小評価している:旧来型のマーケターや広報担当者でオウンドメディアは回せると考えており、デジタルネイティブな人材の価値を見落としている。
- ・デジタル分野の人材評価ができない:ウェブマーケティングやデータ分析などの専門性を適切に評価するノウハウがない。
- ・上司自身のデジタルリテラシーが低い:デジタル分野の知識が乏しいため、求められる人材像を具体的にイメージできない。
つまり、上司もまた、デジタル分野の知識が乏しく、その重要性を十分に認識できていません。その結果、オウンドメディア担当者の人選や体制構築を失敗してしまっているのです。上司にもふさわしい人材がいないわけですから、会社全体がデジタルシフト(製品・サービスからデジタル中心への移行)に適応できずにいると見ていいでしょう。
担当者には交渉能力・マネジメント能力も必要
このサイトでは何度かいっていますが、ホームページ制作業者らは必ずしもプロフェッショナルではなく、良心的とも限りません。人材を選び、担当部署を整えるのは、外部の業者に対して主導権を握り、仕事内容に目を光らせるためです。
その上で、次のような心がけで望む必要があります。
- ・自社の意向をしっかりと伝え、受け入れてもらえるコミュニケーション力を発揮する
- ・外部業者の役割と守備範囲を正しく認識し、主導権を自社側で握る姿勢を持つ
- ・外部業者の成果物を適切に評価できる専門知識とクリティカルな視点を持つ
- ・改善点があれば適切にフィードバックし、協力して質の向上を図る姿勢で臨む
- ・自社の事業や製品への深い理解に基づき、ディレクションできる専門性を持つ
- ・外部業者との信頼関係を構築しつつ、一定の距離感と主体性を持ち続ける
オウンドメディアへの取り組みから経営陣のデジタル化・DX化への対応力がわかる
オウンドメディアは、デジタルシフトの一種です。しかも、成功事例は少なくなく、具体的な取り組み方がある程度わかっています。にもかかわらず、多くの企業がオウンドメディアで失敗を重ねている最大の原因は、経営陣や上司のデジタルシフトへの意識の低さと、人材・体制の不備にあります。
経営陣は、オウンドメディア以外にも、デジタル人材の確保や組織作り、従業員のDXマインドセット改革など、抜本的な経営変革にも取り組まなければなりません。デジタルシフトへの備えが不十分であれば、時代に取り残され、成長の機会を失う危険性は高まります。
オウンドメディアへの取り組みでは、単なるサイト作りにとどまらず、経営陣のデジタルシフトに対する意志と、戦略的な人材・体制作りの手腕が試されていると考えていいのではないでしょうか。
ご質問・ご感想をお待ちしています!