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撮ったままの写真と、頭にインプットされる光景にはズレがある〜レタッチが必要なわけ

作業中のphotoshop

「今のカメラは撮って出しでも十分にきれいから、レタッチは必要ない」という人も見かけます。確かに、撮って出しのクオリティーは上がりました。

しかし、人間の目と脳には「実際に見た光景と、頭にインプットする光景との間にはズレがある」という困った習性があります。撮ったままの写真は「実際に見た光景」に近いために、インプットされた光景ともズレがでます。

このズレはどんなに高性能なカメラでも埋められません。埋めるために撮影後にやる作業がレタッチです。

色やコントラストその場にあったままに再現しても、自然な光景の写真にはならない

写真の撮影時でも、後からレタッチするときでも同じ話です。次の3点はしっかりと覚えておかなければいけません。

(1)写真は引き算で考えるべきだ。余白や余分な要素はできるだけ排除し、見せたいものだけを残さないと、印象の弱い写真になる。

(2)撮影場所で実際にあった色や明暗を正確に再現する必要はない。こだわりすぎると、むしろ違和感のある写真になる場合も多い。

(3)一枚の写真のなかには、光のコンディションが異なるいろいろな光景が含まれているのが普通だ。しかし、肉眼で見たときには、光景をひっくるめてではなく、それぞれを別々に見ている。

撮影時はアングルを工夫したりストロボなどで光を補ったりして、これら3点をクリアしなければいけません。撮影後に同じ目的で行うのがレタッチです。

レタッチの基本中の基本はトリミング、色・コントラストの調整

レタッチには、画面のざらつきを直す「ノイズの除去」、フィルター機能を使っての表現の変更なども含まれます。しかし、その最も主なものは「トリミング」と、「コントラストや色の調整」と考えていいでしょう。

むだな部分を削除するだけではないトリミング

トリミングが必要な理由は次の3つぐらいでしょうか。「要らない部分をカットする」「構図の微調整・やり直し」「傾きの補正」です。

カメラ画面の縦横比はそのまま受け入れるな

デジイチ(デジタル一眼レフ)やミラーレスの写真の縦横比は、特に設定をいじらない限り、横3・縦2の比率になっています。90度回して縦位置で撮れば、横2・縦3です。これは採用されているイメージセンサーがそういう比率になっているためです。

しかし、撮ろうとしている光景にとってそれがベストの比率とは限りません。もし、結果として横3・縦2がベストになったとしても、それはただの偶然です。

その光景には横2・縦1がベストかもしれませんし、横3・縦5かもしれません。はみ出た分を残しておくと冗長になるだけです。あるいは、目障りなものが写り込んでいるかも知れません。これらをカットするのがトリミングの目的の第一です。

実はフィルム時代のカメラには特に大きなサイズのフィルムを使う「中判」「大判」と呼ばれるカメラがありました。これらのなかには、ほぼ正方形・全くの正方形の縦横比の製品もありました。

今のデジカメの「横3・縦2」は「比較的使う人が多そうな比率」というだけです。冗長な写真を残さないためには、まずはこの比率から解放される必要があります。

撮影時に考えた構図がベストとは限らない

目的の2番目は「構図の微調整」、あるいは、「構図のやり直し」です。

「その方向にレンズを向け、漫然とシャッターを切るだけ」といった人も実際には少なからずいるようです。しかし、少しでも本気で写真に取り組む人ならば、撮影時に構図は気にしているでしょう。

しかし、そういった人でも撮影したコマをチェックすると、完ぺきではないのが大半ではないでしょうか。「あと少し上下を詰めたい」や「メインとなる被写体を右(あるいは、左)にずらしたい」などです。

たとえば、ポートレート写真の定石に「顔が向いている側と後頭部側ならば、顔が向いている側を広く空ける」があります。この方が安定した構図になるのです。しかし、シャッターを切ったときには、相手が動いているなどが原因で思った構図に収まらない場合があります。こういった場合も、撮影後のトリミングで調整します。

あるいは、もっと大きな修正もあるかも知れません。「撮ったときは判断できなかったが、被写体の主役を変えたほうがいい」もありうる話です。そういった際も可能ならばトリミングでカバーします。

傾いた光景は、見る人を不安にさせる

傾きを直した写真
撮って出しでは、左に約6度傾いている。その傾きを直したのが右。本来ならば周囲をトリミングするところだ。傾き具合がわかるようにそのまま残した。

3番目に挙げましたが、私自身が最も必要としているのがこの傾きの補正です。

SNSを見ていると、10度20度傾いた写真を平気で出している人は少なくありません。なかにはほぼ45度傾いていて、「縦横どっちの写真のつもりなのかもわからない」といったものまであります。

おそらくは、じっくりと人にみてもらえません。というのは、本来水平であるべきものが4、5度傾いているだけでも、見る人は不安を覚えます。水平・垂直のラインが全く画面の中になければ、見る人も傾いているのに気が付かない可能性もあります。しかし、建物などの場合、たいていは縦横の線が組み合わさっているので、一目瞭然です。

私の場合は、2度も傾くと「えらい失敗をしてしまった」と思ってしまい、直さないと落ち着きません。写真加工ソフトのPhotoshopにはワンクリックで0.5度ずつ直せるように設定しているぐらいです。

もちろん、撮影時も傾かないように注意しています。しかし、手持ち撮影の場合は、誤差をコンマ何度レベルに収めるのは困難です。特に、体を乗り出すなど不安定な姿勢でカメラを構えたときには、大きく傾けてしまいがちです。撮影後にPhotoshopに頼らざるをえません。

カメラが正しくても、コントラストと色をそのままにすると違和感のある写真になる

人間の目と脳の習性を知っておくと、色やコントラスト関連でやるべきことも理解しやすくなります。

人間は見たままではなく、先入観・固定観念を優先して記憶する

電球色のLEDの下で撮った招き猫
電球色のLEDライトで撮った招き猫。右は同じ写真を補正した。実際に目に見えているのは、左のオレンジに“色かぶり”した状態のもののはずだ。しかし、だれしも「この種の焼き物の地合いは白い」と覚えている。そのため、右の白く補正したほうを自然と感じる人が多い。

もし、レタッチ前の写真のコントラストが低く、色もさえなくても、多くの場合はカメラが間違っているわけではありません。たとえば、電球色のLEDに照らされたものは、本来は真っ白なものでもオレンジがかっています。多くの場合、コントラストも高すぎたり低すぎたりします。

一方、人間の場合はものを先入観や固定観念で見ます。どんなにオレンジがかっていようと、白磁の皿の色は「白色」と判断し、記憶にも残します。ほかの光源と物の組み合わせでも同じです。青い光に照らされていても、熟したいちごは赤色です。

光が当たりすぎて白く飛んでいようと、影になってほとんど黒くつぶれていようと同様です。すでに持っている知識に合わせて記憶します。

実際通りの光景を写真に残すと、むしろ違和感を持たれる場合が少なくありません。ですから、色やコントラストは先入観・固定観念に合うようにと補正します。

飲食店でのオレンジがかった皿などは白く補正する

白熱灯(裸電球)や蛍光灯はすっかり姿を消し、たいていはLEDライトに置き換わりました。LED電球はその色合いから、「電球色」「温白色」「昼白色」「昼光色」といった具合に分かれています。写真などの用語でいえば、この順番で「色温度が低い」から「高い」になります。

実はフィルムカメラの時代もデジカメになってからも、カメラが最も得意な光は太陽光です。そのため、室内で撮った写真でも、太陽光に色温度が近い「昼白色」「昼光色」の照明が使われていれば、色についてはそれほど強い補正は必要ありません。

屋台の焼き鳥
Adobe ストックで提供されている『屋台の焼き鳥』。上がオリジナルで、下はオレンジ色を弱めるように補正した。「屋台の雰囲気を残すために、電球色をそのまま残す」も選択肢としてはありうる。撮影意図次第だろう。

問題になりがちなのは、「電球色」です。「気分が落ち着く色合いである」「食べ物がおいしく見える」として、よく飲食店で使われています。

ところが、写真になると食べ物は濁ったような色になります。肉眼でみたときとはまったく逆に、おいしそうには見えません。特にスイーツや鮮魚で顕著です。やはり、撮るときに光源を工夫するか、撮ったあとでレタッチするしかありません。

この「色温度の調整」は「ホワイトバランスの調整」とも呼ばれます。

ただし、補正し切るのが正解とは限りません。その場の雰囲気を残すために、あえてオレンジ色を残す場合もあります。「撮影の意図次第」といったところです。

低い・高いのあるコントラストも記憶に残ったものに合わせる

コントラストもまた、肉眼で見たときと、写真になったときとで印象がズレがちです。

極端にコントラストが低くなるのは逆光のときです。しかし、人間の目はそういったときでも、そのコントラストの低い光景の中にも、どういったものがあって、どういった図柄になっているかまで読み取ってしまいます。

逆にコントラストが高くなるのは、夜間に一方向からだけライトが当たっているようなときです。この場合も、肉眼は補正して光景を眺めます。

このどちらとも、できれば撮影時にコントラストの工夫をしておきたいものです。しかし、必ずしもできるものではありません。それ以前に、コントラストが高い・低いに気がつくにもそこそこの経験が必要です。

やはり、撮ったあとからのレタッチが必要になるのです。

色やコントラストのコンディションは同じ画面内でも一様ではない

これら「色の補正が必要になる・コントラストの高い低いを調整する」は写真1枚丸々の話とは限りません。

1枚のなかに収まっている光景でも部分部分を見れば、明るすぎるところ・暗すぎるところ、コントラストの高いところ・低いところがでてくる場合が少なくありません。

たとえば、喫茶店の店内を見渡すような写真を撮って、「カウンター席は暗めで電球色のLEDが使われている。窓際の席は直射日光が当たっている」などです。

人間の目は、明るいところを見るときは瞳孔を小さくし、暗いところは逆です。それぞれ見るものに合わせているのです。しかし、一枚の写真にすると、明暗の差がそのままでてしまいます。

こういった場合は、それぞれ別に補正をする必要があります。「範囲指定をして、部分ごとに違う補正をしなければいけない」ということです。

「範囲指定をし、しかも、範囲指定をしたとはバレない」はレタッチをやるのならば、いずれマスターしなければいけないスキルです。

補正は撮影時にもできるが、現実には手間がかかりすぎる

色温度の補正、コントストの調整も、撮影時にカメラボディーで設定できます。しかし、大半の人はカメラ任せのオートにしているのではないでしょうか。

場面場面で設定を替える必要があります。ピントを合わせたり、シャッターチャンスを狙ったりといった一方で、あれこれボタンを押して、設定画面を呼び出さないといけないのです。

カメラ任せにしたくなるのも無理はありません。やはり、レタッチが必要になります。

本気でレタッチするならば、保存データはJPGではなくRAWにする

実は、「撮影時にやったほうがいいかもしれない設定を後回しにする」、しかも、「大幅、かつ、正確に補正できる」方法があります。SDカードなどの記録メディアに保存するときのデータ形式をRAWにするのです。

ごく一般的に使われているデータ方式はJPGです。これはすでに、オートでコントラストや色温度を補正してあるだけではありません。強力にデータが圧縮されています。そのままでは、記録メディアがすぐにいっぱいになってしまうのです。

これら補正する・圧縮するの際には、イメージセンサーが作った撮影データを大幅に間引きしています。さらに色温度などの補正を加えるには、足りないデータもでてくるために、あまり再補正には向いていません。

これに対し、RAWデータでは撮ったときの情報がそのまま記録されています。「データ量が大きくなりすぎる」「そのままでは画像データにさえなっていない。そのため、『現像』という作業がひとつ加わる」といった欠点はあります。しかし、「少しでもいい画質を求めたい」という人には、無視できない撮影データ保存方法です。

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