デジカメが高感度をカバーしても外付けストロボが必要なわけ・その1〜内蔵ストロボの限界
デジカメの内蔵ストロボ(内蔵フラッシュ)には「パワーが弱い」「使うと不自然な写り方になりがち」といった欠点があります。
にもかかわらず、「これで暗いところでの撮影も大丈夫」と安心してしまう人もいるようです。それでは、夜間や室内などでのまともな撮影には進めないままです。まずは、内蔵ストロボの限界を理解しましょう。
目次
内蔵ストロボのパワー(ガイドナンバー)は最大でも12程度
カメラボディーの中のごく一部を使っているだけの内蔵ストロボと、製品によってはカメラボディーとそう変わらない大きさの外付けストロボが互角のはずがありません。直感的にわかりそうなものですが、意外に気が付かない人も多いようです。
ストロボのパワーの指標はガイドナンバー
ストロボのパワーの強さ(発光量)はガイドナンバーで表され、レンズの絞り値(F値)や光の届く距離との間で次のような計算式が成り立ちます。
ガイドナンバー(GN)=絞り値(F値)×距離(m)
もし、持っているデジカメに内蔵ストロボがあれば、スペック表などにガイドナンバーが書かれているはずです。小さければ4前後、最大でも12前後です。
ガイドナンバーはイメージセンサーの感度設定で変わる
実は、スペック表にあるガイドナンバーはそのまま先の計算式に当てはめてはいけません。というのは、これはISO感度が100のときの数値です。計算式に当てはめる前に、感度を倍にするたびに√2倍(1.41倍)にします。スペック表のガイドナンバーが6ならば、感度400で12、感度1600で24、感度6400で48です。
ただ、初心者の大半はシャッタースピードも絞り値(F値)もカメラ任せにしているのではないでしょうか。「ガイドナンバーを何倍にして……絞り値をチェックして……」といわれてもちんぷんかんぷんでしょう。少しハードルが高いかもしれません。
「標準ズームキット」の内蔵ストロボは非力でレンズも暗い
初めてカメラを買う人の多くは、エントリークラス(早い話が、安い商品)のボディーとエントリークラスの標準ズームでセットになった商品で購入します。このセットは「標準ズームキット」などの名前になっています。
このパターンでの人気商品のひとつがキヤノンの「EOS R50」です。かつての「EOS Kiss」シリーズの実質的な後継商品と考えていいでしょう。スペック上のガイドナンバーは内蔵ストロボとしては標準的な「6」です。
この「EOS R50」と「キット」として組み合わされることの多い「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」で内蔵ストロボの届く限界の距離を出すと、以下のとおりです。
・感度を実用上のほぼ限界の6400にし、広角側を開放(f4.5)で使った場合
ガイドナンバー(6×8)÷絞り値(f4.5)≒10.6メートル
・同じく、望遠側を開放(f6.3)で使った場合
ガイドナンバー(6×8)÷絞り値(f6.3)≒7.6メートル
「開放」とは、「レンズの直径を最大限使い、一度に取り込める光の量も最大にした場合」とお考えください。「キット」で組みわされているレンズは、開放での絞り値が大きく(≒レンズの直径が小さく)、取り込める光の量も少ないために、ストロボの効果を小さくしてしまいます。
内蔵ストロボが届くのはよくて十数メートル、普通で5、6メートル
これらは「あくまでストロボの光を届かせることだけを考え、ほかの条件を限界に設定した」という話です。しかも、被写体までの間にチリ・ホコリ、水蒸気があって、その分届く距離も短くなります。「感度6400」も「絞り値の開放」も、ある程度はカメラがわかっている人でないと設定しません、できません。
スペック表を見るのが面倒な人は、極めてアバウトな感覚ですが「内蔵ストロボとしてはパワーが強力な場合で、光が届く距離は10メートル強」「逆に非力な方ならば、5メートル前後」と覚えておくといいでしょう。
一方、外付けストロボの場合、ガイドナンバーは20〜60ぐらいが一般的です。20の場合でも、「EOS R50」の3倍以上、60ならば10倍の距離までストロボの光が届く計算になります。
パワー以外の内蔵ストロボの限界
内蔵ストロボにはほかの弱点もあります。
懐中電灯で照らしたのと同じ角度からしか照射できない
ストロボを使っても使わなくても同じです。まず、「基本となる光の角度(光源の位置)」を覚えておきましょう。
もちろん、撮るものによっては「半逆光がいい」などもあります。それらはあくまで例外と考えてください。最も素直に写るのは、斜め上・斜め横から光が当たっているときです。もう少し厳密に規定すると、「カメラから見て、被写体には(カメラ手前側の)上45度、(被写体に向かって)左右どちらか45度から光が当たっている」です。
しかし、内蔵ストロボはカメラと一体化しているので、当然のことながら被写体に当たる光は「上から0度、左右も0度」の真正面です。
このような角度で光を当てて、ものを見るのは懐中電灯を手にしたときぐらいです。背後などに出る影も不自然ですし、被写体自体からも立体感が消えます。
距離の違う複数のものを撮ると、手前は真っ白、奥は真っ黒になりがち
これは内蔵ストロボでも一般的な外付けストロボでも同じですが、ストロボの発光部の面積は狭く、ほとんど「点」といっていいぐらいです。
そこから放たれ、1メートル先の縦1メートル横1メートルの範囲に当たった光は、2メートル先ならば縦2メートル横2メートルの範囲に広がります。1平方メートルから4平方メートルへの変化なので、単位あたりの光の量は4分の1しかありません。4メートル先ならば16分の1です。
これに気が付かず、2メートル先に発光量を合わせると、1メートル先の物は真っ白に、4メートル先の物は真っ黒になります。1メートル先や4メートル先に合わせても、やはりほかの距離の物は真っ白や真っ黒になります。
これを避けるためにはストロボの使い方を工夫しなければいけません。しかし、カメラと一体化し、構造もシンプルな内蔵ストロボではできる工夫はほとんどありません。
上位機種に内蔵ストロボがないのは「中途半端だから」
カメラメーカーによって多少の違いはあります。しかし、だいたいは「エントリークラスのカメラには内蔵ストロボがついている。上位機種になればなるほどつけなくなる」で一致しています。
通常は、値段の高いカメラほど機能が充実しているはずです。しかし、内蔵ストロボについては、逆なのです。
これは「撮り方にうるさい人ほど、内蔵ストロボが不要だと思っている」を示しています。カメラメーカーはそれにこたえているだけです。
「内蔵ストロボがあれば便利」といった場面がないわけではありません。しかし、それをいうのは、まずは外付けストロボを使いこなしてからでしょう。
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