中小企業だけではない ホームページ制作は広島市や日経225企業でも失敗する
だれもが知っている大企業・大組織が運営するホームページ・オウンドメディア(自社運営のサイト)でも、「一見それっぽくできているが、サイトとしての構造はデタラメでしかない。文章・写真の質も低い。SEOなどまったく気にしていない。訪問者もいない」が珍しくありません。
典型的な原因は「ホームページを持つだけの体制を組織内に作っていなかった。さらには、制作を依頼した業者もインチキだった」です。実は、中小企業も大企業・大組織も失敗の仕方には大差はありません。
世間の大ひんしゅくを買った広島市の旅行サイト
「2024年秋、大注目を浴びた」というよりも、「世間から大ひんしゅくを買った」オウンドメディアがあります。広島市が運営する観光サイト『広島tabi物語』です。
必要なコードはない・文字数さえ最低レベルもないページばかり
直後には、小手先の改装をして批判をかわそうとしたようです。しかし、SNSなどで批判を浴び始めてから1週間ほどで閉鎖されました。今は見られません。
私はといえば、ひと目見て「こりゃまた、貧相なサイトだな」と思ったので、閉鎖されるより前にコードなどをチェックしました。
・観光スポットもいくつか取り上げられているけども、文字数はどの記事も300程度までしない。これでは、Googleボット(サイトを訪問して、検索順位を決定するプログラム)も評価しようがない
・たとえば、見出しには大きい順にh1、h2、h3といった「タグ(文字列)」をつけてプログラミング言語にする。SEO(検索順位を上げるための技術)では欠かせない。だけど、まったくない
つまり、絶対に検索では引っかかってきません。問題が発生しなければ、おそらくは訪問者などほとんどゼロのサイトだったはずです。
制作したのは、兵庫県知事選の例のPR会社
これが世間の注目を浴びたのは、実は株式会社メルチュ(兵庫県西宮市)が制作したものだったためです。社員数は社長も入れて5人しかいません。しかも、本業はホームページ制作ではなく、PR業です。
兵庫県知事選の際、「再選を果たした斎藤元彦の広報・SNS戦略を担当していた」と自ら明かし、「公職選挙違反」を疑われた、あの折田楓が経営する会社です。
選挙に関わった様子があまりにはしゃぎ過ぎだったのに加え、派手目のファッションを好んだために、折田は「キラキラ広報女子」と呼ばれました。記憶に新しいところでしょう。
税金で作った、キラキラ広報女子の自己顕示欲発揮の場

『広島tabi物語』が特に批判を浴びたのは、本来裏方である制作会社社長がサイト内のあちらこちらで登場し、しかも場違い感がすごかったためです。特に1カ所だけ挙げると、トップページ冒頭のアイキャッチ(目を引くために使われる画像)になった写真では、原爆ドームの前で満面の笑みを浮かべていました。
代表的な批判の声は、「原爆ドームを遊園地のアトラクションと間違っている。悲劇の象徴である原爆ドームの前でよくぞあそこまで楽しそうにできるな」でしょう。
ちなみにこの観光サイトに対して、広島市が支払った金額は……
- 当初(2019年)の制作費として、インスタなどの対応と合わせ1,300万円
- 2024年までだと総計3,212万円
……と伝えられています。
お堅いはずの役所で、しかも、中核都市の規模でもこの体たらく
民間企業ならば、「バカだなぁ」ですむかもしれません。それが市役所で、しかも、中国地方の中核都市です。当然のことながら費用の出どころは税金でしょう。
広島市とその担当者は、こんなホームページ制作業者を選び、また、完成したサイトも受け取りの拒否をしなかったわけです。さらには、批判・非難が巻き起こるまで5年間も放置したのです、おそらくは何の役にも立っていなかったでしょうに。
広島市議会で追求されて然るべきところだろうと思います。ただ、今までのところ、そういった話題は聞こえてきません。
日経225採用銘柄の会社までもが失敗している
この種の例はたくさんあります。もう1件だけ、私がライター兼カメラマンとして関わったオウンドメディアを挙げておきましょう。所有しているのは製造業の会社です。当時は日経225採用銘柄でした。つまり、どう考えても「日本の産業界を代表する大企業」です。
HTMLの構造が破綻しているサイト

先日、サイトのソースコードをチェックしました。ソースコードとはウェブサイトの設計図のようなもので、これをもとにネット上の画面を作ります。
どのサイトのページも、ページ上で右クリックして、「ページのソースを表示」などで見ることができます。
それをAI(Claude 4.0)に「エラーがないか」とかけたところ、以下のような問題が発見されました。

難しい話は避けますが、「基本中の基本のソースコードにもなっていない」ぐらいの意味です。
“伝書鳩”にさえならない制作会社
この制作をやったのは東京の会社です。社業としては「ホームページ制作」「ライターの手配(原稿代行業)」「Webマーケティング」などを列挙しています。しかし、社内にWebデザイナーやライター、マーケターはいません。こういった人たちをマネジメントとするのはディレクターや編集者ですが、それもいません。
私が原稿を納めるときも、「右から左に素通り」「言葉を中継するだけの伝書鳩」ならばまだいい方で、「ちょっとでも仕事を覚えてもらおう」とわざわざ解説することが少なくありませんでした。窓口になっている人に「記事の書き方を覚えたい」と言われ、子供の作文のような文章をチェックしたことさえあるぐらいです。
会社側の担当者は素人の一人だけ、しかも兼任
一方の依頼主(エンドクライアント)も似たりよったりです。「広報」とは呼ばれているけども、製造部門から急に異動してきた人でした。また、Web関連だけの専任でもありませんでした。
ただ、これはBtoCの会社ではなく、BtoBの会社だったのも影響したかもしれません。
おそらくは、短期間で去っていくのでしょう。勉強する気もなさそうでした。つまり、依頼主・制作会社(?)のどちらにも専門家はいませんでした。
本格的なホームページを持つには社内体制も必要
思い切っていうと、「依頼主・制作会社のどちらサイドも、付け焼き刃の作業で済ませている。人もお金も手間もかけていない」といったところです。
「将棋」レベルが必要なのに、「はさみ将棋」しかやらない
しかし、そうなるには、ホームページ制作固有の問題もあるかもしれません。
初めて関わる人にしたら、「いい加減にしか作っていないホームページも、きっちりと作り上げたホームページも同じに見える」のかもしれません。というのは、「ネット上に文章と写真を並べているという点で同じですから。
将棋とはさみ将棋はどちらも将棋盤と駒でゲームを楽しみます。囲碁・五目並べも同様です。「『はさみ将棋』しかしていないのに、それを『将棋』だと思っている人」が依頼主・制作会社の両方にいるのです。
「すごく奥の深いもので、楽しめるようになるには、ルールや作戦などに習熟しないといけない」など想像の外でしょう。
本来はこれだけの社内体制が必要
では、「本物の”将棋”をするにはどれだけのことが必要か」です。
体制(人員)面だけに限ってみても、依頼主側ならば……
- プロデューサー:予算確保、外部折衝
- ディレクター:企画・品質管理
- 編集者:コンテンツ企画・ライター管理
制作会社側には……
- プロデューサー:全体統括、依頼主との折衝
- ディレクター:制作進行、品質管理
- Webデザイナー:サイト設計・デザイン
- ライター:執筆・記事内のSEO
- カメラマン:写真撮影
- マーケター:サイト全体のSEO・解析
……が必要です。
ただ、これはあくまで一例です。実際には、兼任する場合も少なくありません。あるいは逆に、プランナー(戦略立案・企画構築)、ウェブ解析士(データ分析・改善提案)もいてほしいところです。「いないのは、だれかにその役割を押し付けている」「本来必要なはずの人を省略している」といってもいいぐらいです。
また、これらはあくまで大企業限定の話です。中小企業は人材や費用がネックとなってこうはいきません。
畑違いの業者への制作依頼も多い
「中小企業にはない、大企業独自の失敗の理由」もある気がします。「広告代理店など、本来はホームページ制作とは別業界の会社に依頼してしまう」パターンです。
あくまで推定ですが、こういった事情でしょうか……
- 広告代理店などは、日ごろから付き合いがある。だから、「相手にとってはホームページ制作は枝葉の事業部門でしかない」、あるいは、「全く未経験」でも依頼してしまう
- 「ホームページを持つ目的は広報・宣伝である。だから、それらの専門業者である広告代理店もホームページ制作をカバーしている」と誤解している
……私が関わっただけでも、地域の独占的存在の大鉄道会社・全国紙などがありました。PR会社のメルチュが『広島tabi物語』を受注できたのも、これで半分ぐらい説明が付くのではないでしょうか。
「失敗しても大きな損失ではない」は間違い
「さまざまなジャンルのさまざまな専門家が力を出し合う。それらを取りまとめる人も必要だ。それで、ようやく成功に近づける」のがホームページ制作です。
依頼主側も制作業者側も「はさみ将棋」をやっていて成功するはずはありません。
しかし、依頼主側の社内からも失敗ホームページに対する批判は意外に起きないようです。
- そもそも、社内の人でさえそんなホームページを訪問しない。内容も知らない
- 間違って訪問しても、文章が下手で読み進めるのが困難になる。評価できるほど読み込めない
- せっかく社内のだれかに担当者を押し付けたのに、わざわざ首を突っ込みたくない
……あたりが理由でしょうか。
いずれ更新もなくなります。いったん作ってしまうと、放置してもお金はほとんどかかりません。あとは”塩漬け”です。
気がついたら、ホームページまるごとなくなっています。人材もお金も手間もかけていないので、惜しくもないのかもしれません。「大した損害も出なかった」と、ホッとしているでしょう。
しかし、比較する対象は「ちゃんとやって成功させていたら、社業にどれだけのプラスになったか」です。いわゆる「逸失利益」です。かかったコストの低さに安心してはいけません。
もし、ライバル企業が成功させるようならば、決定的な差をつけられてしまう可能性があります。
コメントを残す