トップページの「滋賀県の四季」はこうやって撮りました【前編】
このサイトのトップページの冒頭近くには、滋賀県の四季の写真8枚をスライダーにしてあります。「いい写真ですね」といってくれる人はいるのですが、「撮影時にちょっと工夫したから、見られるものになっているんですよ」と申し上げると、びっくりした顔をされます。
スマホでの撮影が当たり前になって、写真は工夫して撮るものだとは思っていない人が増えました。
昔からのプロカメラマンである私にしたら、「撮影テクニック」と呼ぶには大げさです。そう呼んだら、古い仲間には笑われるでしょう。それぞれの写真について、「撮影のちょっとした工夫」を紹介します。
写真の質がホームページの価値を左右する理由
個々の写真の話に移る前に、「なぜ、ホームページでは写真の質が大事か」を確認しておきましょう。
写真はホームページでは重視されていない?

「ホームページには写真が大事」といわれて、異論を唱える人はほぼいないでしょう。しかし……
- 写真ストックサービスを利用して、記事内容とは直接関係のない写真(いわゆる“イメージ写真”)が多用されている
- ほとんどスキルがなく、カメラを持っているだけのライターが取材時についでに撮る写真も当たり前に使われている。制作会社や原稿代行業者にプロフェッショナルな編集者がいるのはごく稀で、その素人写真が素通りで採用される
- スマホ写真も当たり前に使われる。「スマホでもいい写真になる場合がある」ではなく、「写真なんて、ありさえすればよい」が理由
……が現実です。
写真の軽視はホームページに実害を与える
いわば、写真は「添え物」扱いなのです。依頼主らにすると「予算も手間もかけられない」「制作会社の選び方がわからない。カメラマンもどこにいるのか知らない」でしょうから、仕方がないのかもしれません。
しかし、写真を軽視すると次のようなマイナスがあります……
- 写真は優秀な情報伝達手段なのに、イメージ写真にはあなたの会社やお店の情報は含まれていない。「いかにも手抜きのホームページ」の印象も与える
- 「写真がこれほど素人っぽいのだから、文章だって素人が書いたものだろう」とみなされ、記事全体、ホームページ全体の価値を下げる
- スマホ写真は画質が十分ない場合が多いだけではない。「そっちに向かって、シャッターボタンをクリックしただけ」が通常で、構図など考えていない。質の低い写真の代表なので、これも手抜きとみなされたり、ホームページ全体の価値を下げたりする
……などです。
これらの写真はじっと見るのが困難です。訪問者はそこからほかのページやほかのサイトに逃げていきかねません。「写真が離脱ポイントになる」ということです。「SEOを重視しています」といくら制作業者らがいっても、写真を軽視するようでは、それはウソです。
実際に撮った写真を元にしての工夫の解説【春】
まず「前編」では、四季のうちの春と夏の合計4枚について語ってみます。春についてはサクラが2枚です。
湖西線・志賀駅直近、琵琶湖湖岸の満開のサクラ

JR湖西線・志賀駅の南100mあまりのところに、5、6本のサクラの大木があります。このあたりの湖岸は「県営都市公園木戸湖岸緑地」となっていて、その一角です。
海津大崎にも負けない? 絶好のロケーション
サクラといえば、多くはソメイヨシノでした。ただ、ソメイヨシノは挿し木で増やすしかなく、だんだん劣化してきて、この手段での世代交代は難しくなりました。近い種類のサクラにすでに植え替えられている場合が多いようです。
木戸湖岸緑地のものはかなりの古木のようなので、ソメイヨシノの可能性は高いでしょう。
観光スポットというわけではありません。しかし、満開の時期には写真を撮るなど近所の人らが楽しんでいます。「湖岸のサクラで有名な海津大崎(滋賀県高島市マキノ町)まで行かなくてよい」との声も聞きました。
午前中に背景を湖面にすると完全な逆光
そのとおり、ここの撮影が魅力的なのは湖岸に面している点です。しかも、サクラは一段高いところにあるので、簡単に「手前が満開の桜、背後が湖面」のアングルにできます。
通常ならば、お昼すぎからが撮影に適した時間です。というのは、湖面を背景にすると東向きになります。午前は逆光なのです。せっかくのサクラの花が黒くつぶれてしまいます。
曇っていたら逆光は回避できます。しかし、発色はよくありません。空まで入れる場合には、やはり青空にしたいところでしょう。
日中シンクロで、サクラにストロボ光を当てる
しかし、この写真では午前中の、それもまだ低い太陽が真正面にあるタイミングを選んでいます。というのは、湖面にキラキラと反射する太陽の光を入れたかったからです。
当然、サクラの花はこれ以上ない逆光です。通常ならば黒くつぶれても仕方ありません。
ここでストロボが登場します。サクラの花がきれいに見えているのはストロボの光のおかげなのです。使い方の注意は以下の点です。
- ストロボの発光量はカメラ任せ・ストロボ任せのオートにはできない。というのは、ここまでの逆光になるとカメラも正確に測光できない。マニュアル発光にして撮る
- ただし、一発で決めるのはベテランでも難しい。ストロボの発光量だけではなく、シャッタースピード、絞り値はいくつか試してみる。そのシャッタースピードなども当然マニュアルで決める
- 手前のサクラと背後の湖面の明るさの差にも注意が必要になる。たとえば、サクラはよくても背後の水面が真っ白になるかもしれない。これも、いろいろ試し、実際に撮れたものをモニターで確認しながらの撮影になる
「ストロボといえば、暗いときに使うもの」と思っている人が大半ではないでしょうか。こういった使い方を「日中シンクロ」といいます。「全体的には光が足りていても、足りないところがあれば、その分だけをストロボで補う」といったイメージです。
真っ暗な中で夜桜を撮る

こちらも県営都市公園木戸湖岸緑地の湖岸にあるサクラです。今度はほぼ一本全体、それもすっかりと日が落ちてから撮っています。いわゆる「夜桜」です。
撮影場所は真っ暗、手元も見えない
これはどういった光が当たっていると思われたでしょうか。
夜桜見物の会場として用意されているところならば、夜間の照明もあるでしょう。しかし、ここはそうではありません。それどころか、街灯もありません。カメラのダイヤル類もまったく見えないので、手元を見るのには自転車のライトを外して使いました。
実は、撮影にはリモコン機能を持ったストロボ2台が活躍しました。カメラからは左右に離して2方向から光を当てています。
ストロボ1台では不自然になる場合がある
「クリップオン(カメラに直接つける)の1灯だけ」が最もよくあるストロボの使い方です。しかし、この場合はだめです。
- ストロボの光が届く量は距離の2乗で減っていく。桜の木の手前側と奥側では明暗の差が大きく出る
- 手前の葉や枝がさえぎって、奥の枝などには光が届かない
- これら両方の理由で、サクラの木の立体感が出ない
「距離の2乗で……」を補足しておきます。ストロボの発光部の面積はほぼ「点」です。1メートル先の1×1メートルの範囲に当たっていた光は、2メートル先では2×2メートルまで広がります。4メートル先ならば4×4メートルです。
面積でいえば1平方メートルから4平方メートル、16平方メートルへの変化です。同じ単位あたりならば、1/4、1/16の光しかあたりません。
カメラから離したところの左右2方向から当てると、ここまでの光の減少にはならないのです。
ストロボのコツは「使ったとバレないように使う」
ストロボは「使ったとはわからないように使う」のがポイントです。実は先の昼間のサクラも同じでした。こちらも、逆光による暗さを補うためであっても、使ったと簡単にわかるようでは失敗です。
「手前にあるサクラの花ばかり明るくならないようにする」「サクラの花の中での影の出方までチェックする。影が不自然にならないようにする」まで気にして撮ったのが、1枚目の写真でした。
実際に撮った写真を元にしての工夫の解説【夏】
夏ならではの被写体の代表は花火でしょう。きれいに撮りたい人は少なくないようです。しかし、実際に撮ってみると思ったようにはいきません。「プロ用のカメラじゃない仕方がない」などと思ってはいないでしょうか。
実は、カメラやレンズ自体は特別なものは要りません。初心者向けの製品で十分です。ただ、ちょっと特殊な撮り方をするだけです。
大津志賀花火大会

毎年7月下旬に、琵琶湖の代表的な水泳場・近江舞子で開かれるのが大津志賀花火大会です。打ち上げ個所は湖岸の水泳場から沖合250メートルの地点です。
花火は見るのには、近いほうが迫力があってよいのでしょう。しかし、写真となると私が撮りやすいと思っているのは距離を置いた場所です。
この写真を撮影したのは、実は4キロほど南にあるマンションの屋上です。そこから望遠レンズを使いました。
花火を花火らしく見せる多重露光
「ちょっと特殊な撮り方」というのは「多重露光」です。同じ一枚の写真の中にタイミングの違う複数の花火が写っています。「重ね撮り」といったほうがイメージが湧きやすいかもしれません。
フィルムの時代は、シャッターを切ってもフィルムが次のコマに移らないようにして多重露光を実現していました。そういう設定ができるようにもなっていました。今のデジカメにも、内容としては同じ機能があります。
といいながら、この写真のときは、カメラの多重露光の機能は使っていません。というのは、多重露光をするには、シャッター幕が開いている間にカメラボディーを触る必要があります。よほどそっとやらないと、カメラを揺らしてしまいます。「重ね撮り」ですから、地上の明かりなどがぶれたり、2重に写ったりします。
代わりにやったのが、「黒い布を用意して、レンズの前を覆う・それを外す」です。
バンと一発打ち上がったときに、「こいつは、このあたりまで行って、こういう感じで広がりそうだ。だから写す」「すでに同じところに上がったのを撮っている。写してもごちゃごちゃするだけだから、これはやめる」などを判断して、布を操作しました。これはフィルムの時代からあった、裏技です。
三脚はできるだけ重いものを
三脚は当然必要です。それもできるだけ重いもののほうがうまくいきます。というのは、露光時間(シャッタースピード)がやたら長いのです。
短くても30秒、長ければ2分、3分とシャッター幕を開けています。その間の必要なときだけ、レンズの前の黒い布を外しているのです。これだけの長い時間になると、やわな三脚では揺らしたつもりがなくても揺れてしまいます。
家電量販店で売られている三脚の大半は1キログラム未満です。このとき使ったのは約3キログラムの製品でした。
また、「シャッターレリーズ」もあったほうがよいでしょう。カメラ本体を触らずにシャッターを切れるだけではなく、シャッターボタンをずっと押しておかなくてもシャッター幕を開けた状態にもできます。当然、カメラを揺らさないためのものです。
現実に見た光景ではなく、記憶に残った光景を残す
「同じ一枚の写真の中にタイミングの違う複数の花火が写っている」と聞くと、「インチキ写真ではないか?」と思った人もいるかもしれません。
しかし、写真の大原則があります。「その場で実際に見た光景を再現するのではなく、記憶に残った光景を再現する」です。
また、「その場で実際に見た光景」も実はけっこう怪しいものです。肉眼や脳はいくらでも“補正”をかけてしまいますので。
たとえば、電球色の照明に照らされたイチゴのショートケーキのクリーム部分はオレンジがかっているはずです。しかし、見る人の目には「真っ白なクリーム」と見えているのではないでしょうか。また、そうも記憶しているはずです。
花火も一発だけを残すと、「こんな寂しいものではなかった。もっと派手だった」と思うでしょう。逆に2分もシャッター幕を開け、その間に上がった分全部を写真にすると「ぐちゃぐちゃしてしまって、どれがどの花火かわからない。いろいろな種類のがあったはずなんだが」となってしまいます。
多重露光は花火を見た人の記憶に残った光景に近づけるための工夫です。
びわ湖大花火大会

滋賀県では最大、関西でも有数の規模なのがびわ湖大花火大会です。毎年8月初旬に開かれます。会場は大津市中心部の大津港なのですが、私が京都市内西側の右京区梅津に住んでいたときは、マンションの高層階というのもあって、そこまで「ドン」といった音が聞こえていました。
大津志賀花火大会では打ち上げ数が約2,000であるのに対し、こちらは約1万です。一発一発の大きさも大津志賀花火大会の最大7号玉に対し最大10号玉です。「10÷7の3乗」ですから、体積でいえば約3倍もあります。
多重露光が基本であること、三脚は重いほうがよいことなど、写真の撮り方の基本部分は大津志賀花火大会と同じです。
ただ、打ち上げ個所が大津志賀花火大会が1カ所であるのに対し、びわ湖大花火大会は大きく分けても2カ所で、横に広がります。「なかなか構図としてまとめにくい」と感じました。
また、人出が多いために、交通規制も敷かれます。この写真を撮ったときは、重い三脚を背中に背負い、自転車で行きました。
このようにいろいろと難しい撮影になります。ただ、湖面まで色とりどりに染める花火はここならではのものです。滋賀県内など近くに住んでいるのならば、一度は挑戦する価値はありそうです。
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