トップページの「滋賀県の四季」はこうやって撮りました【後編】
前編では、「日中シンクロ」「リモートストロボ」「多重露光」などの話が出てきました。写真はやはり「光をどうするか」なんですよね。そのままではなかなか“絵”になりません。また、人工的に光を加えても、写真としてのルール違反ではない点も触れました。
この後編ではようやく「構図」の話も出てきます。
ただ、どの話も間違ってほしくないのは、「これらのポイントだけわかっていれば、同じ写真が撮れる」ではない点です。必要な知識のごく一部を紹介しただけです。「頭でわかっていても、実際にはできない」もあります。スポーツに似ています。
実際に撮った写真を元にしての工夫の解説【秋】
夏の定番の被写体が花火であるのならば、秋はなんといっても紅葉でしょう。ただ、どちらも見た目の感動が大きすぎて、なんの工夫もなくとってもインパクトのある写真になると思いがちです。それが間違いであるのは、すでに花火のところで話しました。
秋は外で過ごすのも快適なので、さまざまな被写体にじっくりと向き合える季節でもあります。
琵琶湖対岸の鈴鹿山脈に昇る朝日

JR湖西線の志賀駅と比良駅の間、線路わきにある14階建てマンションの屋上から撮りました。太陽を画面の中に入れるのはなかなか困難なのですが、まだ弱々しい光の時間なので大丈夫でした。
注目していただきたいのが画面の「明るさ」です。
オート任せでは明るさが狂う
昼間以外の時間帯は、露出やシャッタースピードをカメラ任せにしていては、その時間帯独特の空気感は出ません。
それを理解するためには、まずカメラの仕組みを押さえておきましょう。
メーカーや機種によって名前の違いはありますが、「オート」「プログラム」などのカメラ設定は、「明るすぎるものは暗くする」「暗すぎるものは明るくする」とやります。朝の少し暗いうちに撮っても、夕暮れの暗くなりつつあるときに撮っても、真っ昼間のように写る」ということです。
それでもオートを使う手もあるにはあります。「露出補正」をかけて「1段か2段アンダーにする(カメラが判断した必要な光の量よりも半分か1/4にする)」などです。
カメラの機能・機構の基本的知識は不可欠
まずは、マニュアルを試してみましょう。シャッタースピードや露出値(F値)を自分で決めるのです。
おそらくは、この記事を読んでくれている人の大半は、なんの疑いもなくオートだけを使ってきたのではないでしょうか。
もし、興味があるようならば、課題として「シャッタースピード」「露出値」「露出オーバー・露出アンダー」などの仕組みや意味を理解するように取り組んでください。
そこまで習得するのは長い道のりだろうと思います。ここでは結論だけ申し上げておきます。「カメラが『適正』と割り出してきた設定値よりも、意図的に暗くなる設定値を自分で選ぶ」
かつては当たり前だったマニュアル撮影

「ハードルの高い課題だなぁ。自分には無理だから、もうオートでいい」と思った人もいるかもしれません。
しかし、カメラにシャッタースピードや露出値のオートが採用されたのは、1970年代の中ごろでした。今から見ると、ごく初歩的なもので信頼性も低かったために、多くの写真愛好家はマニュアルでも撮れる時代がずっと続きました。
おそらく、「オートでしか撮れない」人が圧倒的多数派になったのは、スマホの普及の影響でしょう。
「シャッタースピードなどの知識は、かつては写真を撮る人たちは当たり前に持っていた」と覚えておいてください。
空気感を決めるもうひとつの要素「色調」
早朝・夕方・夜などの空気感を決めるもうひとつの大事な要素が「色調」です。デジカメの用語ならば「ホワイトバランス」がほぼこれに当たります。ホワイトバランスもたいていの人はオートから変更していないでしょう。
違和感のない色調にしたいのならば、このホワイトバランスのオートも外す必要があります。
フィルムの時代には色調を変えるのは大変でした。いくつか方法はありますが、その代表のひとつは「フィルムの種類を選ぶ」です。フィルムには「発色の派手なもの・抑えめなもの」「コントラストが強いもの・弱いもの」「特定の色が濃い目に出るもの」などがあるのです。
もうひとつの代表が「カラーフィルター」です。簡単にいえば「色ガラス」とお考えください。これをレンズに装着します。どのようなカラーを選ぶかは、目的次第です。
今のデジカメは、これら「フィルムを選ぶ」「カラーフィルターを装着する」と同じ機能を持っています。「どういったふうに仕上がるか」を想像するには少し慣れが必要で、できることもメーカーや機種ごとに異なります。しかし、撮影時にカメラボディーで設定すればOKです。
あるいは、撮影後に現像ソフトや写真加工ソフトを使っての調整もできます。今回はこちらの方法を使い、私の記憶と比較して違和感のない色調に仕上げています。
滋賀県湖東三山・西明寺の紅葉

湖東三山は滋賀県の西の端にある、金剛輪寺、百済寺(ひゃくさいじ)、西明寺(さいみょうじ)の総称です。いずれも天台宗で、紅葉の名所として知られています。
この写真はそのうちの西明寺です。写真の三重塔は、記録はないものの建築様式などから鎌倉後期の建立と考えられていて、1952年に国宝に指定されました。
背景をぼかす・ぼかさないは調整できる
ピントが合う距離は厳密にいえば1点だけです。2メートル先ならば2メートル先のみ、2.15メートル先ならば2.15メートル先のみです。ただし、その前後にほとんどピンぼけしない範囲があり、これを「被写界深度」といいます。
「背景がしっかりとボケている」状態は、「被写界深度を浅くした」ともいえます。
被写界深度はレンズが広角であるほど深くなり、望遠になるほど浅くなります。つまり、「広角になるほど背景はぼかしにくい。望遠レンズになるほどぼかしやすい」ということです。
背景の方にばかり注目が行く場合が多いようです。しかし、手前側の「前景」も同様です。
また、f値を大きくすれば深くなり、小さくすれば浅くなります。f値はレンズをどれだけ絞って使うか(レンズ内にあって、光を通す装置である絞りをどの程度狭めて使うか)の指標です。「レンズの直径いっぱいいっぱいに光を取り込むと背景はボケる。逆にレンズの中央部分だけで光を取り込むと背景はボケない」と言い換えた方がイメージしやすいかもしれません。
被写界深度を深くして紅葉も搭もくっきり
この写真ではズームレンズをやや広角で使いました。また、ほぼ限界まで絞っています。つまり、「被写界深度が深くなる条件をそろえた」わけです。
深くしたのは、「ピントは奥の三重塔に合わせた。しかし、手前の紅葉もくっきりと見せたかった」が理由です。
逆に「被写界深度を浅くして、手前の紅葉はぼかす」の選択肢もありました。しかし、せっかく色づいているので手前の紅葉も捨てるわけにいきません。
また、前編で解説した「日中シンクロ」はこの写真でも使っています。左上の紅葉の見えている部分は日の当たっている側の裏です。そのままでは、黒く潰れるので、ストロボの光を当てて、“起こして”います。
実際に撮った写真を元にしての工夫の解説【冬】
春のサクラ、夏の花火、秋の紅葉とくれば、当然冬は雪景色でしょう。2枚、組み入れました。
スマホが写真撮影の道具の主流になって、「撮る」作業が軽くなっています。本来必須の知識とスキルだった構図とシャッターチャンスも忘れられがちです。この2枚を使って、構図とシャッターチャンスの解説をします。
雪景色の琵琶湖岸をゆく、特急サンダーバード

特急サンダーバードは北上し、敦賀駅に向かっています。写真ではそこまで表現できなかったのですが、雪をまきあげながらの走行です。奥に見えているのは比叡山です。
JR湖西線の志賀駅・比良駅間のマンション屋上から撮りました。「琵琶湖対岸の鈴鹿山脈に昇る朝日」と同じ場所です。「朝日」では東だったのが、今度はレンズを南に向けました。これも早朝です。それを逃すと、雪が解け始めるだけではなく、湖岸の松並木の上に積もった分は下に落ちてしまいます。
アルファベット構図のうちのC字構図
湖岸が半円状にカーブを描いています。「アルファベット構図のうちのC字構図」の典型でしょう。
「アルファベット構図」とはその名前のとおり、アルファベットの文字と同じ形になる構図です。そう聞くと、いろいろありそうですが、実際にはよく見聞きするのは「C字構図」や「S字構図」ぐらいです。「A」「H」「L」などの解説も見かけますが、こじつけの感があります。
ほかには、「3分割構図(三分割法)」の人気(?)が高いようです。「画面を縦に3分割、横に3分割する。その3分の1 & 3分の1にあたる4つのポイントのどれかに写真の主役を持ってくる」やり方です。
なまじっか構図を気にすると、構図が崩れる
実は初心者には……
○○構図、□□構図、✕✕法などのパターンはまったく気にするな
……とアドバイスしています。
というのは、パターンの名前を気にすると……
- そのままならば、“納まりのよい”構図になっている。なまじっか構図の名前を知っているばかりに、わざわざそれに引き寄せてしまい、構図を崩す場合が多い
- 「3分割構図」などというが、「2分割構図」「4分割構図」などというものもある。「左右から5分の2のところに主役を置いたらダメ」というわけでもない。要は、「見た目にしっくりくる」ようにすればよいだけ
- 構図のパターンは無数にある。構図の名前にとらわれてしまうと、「その名前を知らなかったばかりに、使えずにほかの構図を当てはめてしまう」可能性もある
……といった失敗をしがちです。
初心者は「撮る前に一度は四隅をチェック」
私が構図について初心者にするアドバイスは2点だけです。しかも、この2点は目の付けどころを変えただけで、同じ内容です。
- シャッターを切る前に、一度は画面の四隅をチェックしろ。そこで無駄な空間があったり、邪魔になるものが入っていたら、それを排除してからシャッターを切る
- 初心者の段階では、「日の丸構図」は禁止
「日の丸構図」とは、写真の主題を上下左右の真ん中に置く構図です。画面全体を「白地」、真ん中を「赤地」に見立てて名付けられています。人物写真を撮った際に、「全体的に小さくしか撮れていない。その上、顔が真ん中に来て、頭の上の半分近くが無駄な空間」が典型的な日の丸構図です。
初心者はファイダーの中の中央にのみ集中してしまい、四隅は見えていません。主役も常にど真ん中に持ってきてしまいます。
(1)と(2)を実践して撮った写真は、たいていはなにかの構図になっています。あとからでも、「構図一覧」でも参考にして「これは○○構図で撮った」と、かなりの確率ででっち上げも可能です。
雪の降る中をすれ違うJR117系電車

「琵琶湖対岸の鈴鹿山脈に昇る朝日」「雪景色の琵琶湖岸をゆく、特急サンダーバード」と同じマンションから撮っています。ただ、先の2枚は屋上からだったのが、これは非常階段からです。やや低い位置に変わりました。
写っているのは両方とも117系の車体です。2023年春を最後に湖西線からは姿を消しました。以後はサンダーバードも普通電車も白っぽい塗装の車両しかないので、撮っても積もった雪・降った雪に紛れてしまいそうです。
対角線構図と日中シンクロの写真でもある
もし、構図をいうのならば「対角線構図」です。右上隅から左下隅まで一本の線が引けます。といっても、先にご説明したとおり、「対角線構図にしよう」と思ってアングルを決めたわけではありません。「納まりのいいところを」と考えて撮り、撮影後のトリミングでもそうしただけです。
また、右側の車両を主役と考えるのならば、「3分割構図」といえなくもありません。特に左右の位置はそうです。「『構図』など、そのぐらい後付の解釈でどうにでも説明できる」の証明になりそうです。
もうひとつ、すでに紹介済みの工夫がこの写真にも適用されています。「日中シンクロ」です。「どこにストロボの光が当たっているのか?」と思った人も多いのではないでしょうか。(私の方ではそう期待しています)
雪の粒に当たっています。つまり、雪の粒をストロボで光らせているのです。
雪の粒は存在自体がはかなく、流れてもいるので写真には簡単に写りません。肉眼で「見えた」と思えるのは、雪の粒だけに意識を集中する瞬間があるからです。
ストロボは専用のコードで1メートルほどカメラから離したところで発光しています。クリップオン(カメラの上に直接取り付ける)にしていないのは、車体などほかの光景も見せるためです。クリップオンだと、レンズの真ん前の雪まで光ってしまい、デカデカとし、密度の高い雪が画面全部を覆ってしまいかねません。
シャッターは切ろうと思った瞬間に切れるわけではない
「滋賀県の四季」の写真8枚目にして、ようやくシャッターチャンスの話ができます。
すれ違うギリギリの瞬間になっています。「連写をしたのだろう」と思うところかもしれません。シングルモード、つまり、一発シャッターを切っただけでタイミングを合わせました。
使ったのは富士フイルムのカメラで、ストロボを使ったときは連写はできません。富士フイルムのメーカーとしての判断でそういった仕様になっているのです。
こういった写真を撮るために体に染み込ませておかなければいけないのが、「シャッターが切れるまでのタイムラグ」です。
普段は気にしていないかもしれません。写真を撮るには……
「今だ!」と頭で判断する→指が動き始める→その指が反応するところまでシャッターボタンを押し込む→シャッター幕が作動する
……といった順番を経る必要があります。「慣れた人でもトータルで1/4秒程度かかる」とされています。
野球ならばキャッチャーとの間の真ん中に行く前に「今だ!」
野球ではピッチャーズプレートからホームベースまで18.44メートルです。実際にピッチャーがボールを離す位置、キャッチャーが受け取る位置は少しずつずれますが、この程度は誤差と考えてよいでしょう。時速150キロメートルの速球を投げたとき、キャッチャーに届くまで0.44秒かかります。
つまり、バッターが打つ瞬間やキャッチャーが捕球する瞬間を撮るには、ピッチャーの投げたボールがまだピッチャー寄りにあるときに、「今だ」と判断しないといけません。「1/4秒(0.25秒)」という時間はそういう長さなのです。
車両がファインダーで確認できる前に判断した?
この117系の写真ならば、右の車両はおそらく1.5両分程度奥にあり、左の車両は同様に手前にある時点で、「シャッターを切るぞ」と判断したはずです。目で確認したり、頭で考えても間に合いません。「体が反応した」としか説明しようがないので、自分自身の話であっても「はずです」としかいいようがありません。
だとすると、両方の車両ともほぼこの画面の外にあったはずです。「ファインダーをのぞいていたら、車体が見えないうちに判断をした」ことになります。さすがにそれは無理です。このときはカメラは三脚に据え、レリーズでシャッターを切りました。ファインダーの外を見ていたのです。
「なんで、お前(工房主)はタイムラグを合わせられたのか?」と気になった人もいるかもしれません。「半分は運がよかった。それと、新聞社写真部員時代には野球やサッカーなどのスポーツ写真も撮っていた。もう半分は、いわゆる“昔とった杵柄”」が答えです。
写真の知識・スキルを身につけたい方は、【おまけ】へ
ここまで春夏秋冬8枚の写真を材料に、「ちょっとした撮影上の工夫」を長々と解説しました。
読み返してみて、自分自身でも「もう一歩分ぐらいは、なにか具体的な『写真撮影スキル』の身につけ方のアドバイスがあってもいいだろう」と感じました。
そこで、【前編】とこの【後編】に加え、【おまけ】を書きました。御用とお急ぎでない方は、お目通しいただければ幸いです。
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