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ホームページ制作の見積書【前編】〜複雑なのは下請け頼りが原因?

ホームページ制作の見積書【前編】〜複雑なのは下請け頼りが原因?

ホームページ制作を業者に依頼する際、慎重にならないといけないのが見積書です。依頼主にしたら、業者の良しあしを考える最初の大きな関門でしょう。また、ここまでならば「悪いけど、あんたのところには依頼しない」と拒否も可能です。

これを超えると、「契約」となり料金が発生します。

にもかかわらず、大半の依頼主は見積書を「単なる手順のひとつ」ぐらいに考えてろくに読まないようです。また、読んでもわからないようにできています。

以下、ごく一般的な業者の出す見積書の“仕組み”を解説します。

一般の人にはわかりにくい見積書

定食屋でとんかつ定食を食べたとしましょう。請求書に……

  • とんかつ(下ごしらえ):500円
  • とんかつ(揚げ作業):300円
  • ご飯:150円
  • みそ汁:100円
  • キャベツ:100円
  • おつけもの:50円

……としてあったら変ですよね。通常は「とんかつ定食:1,200円」でしょう。「ご飯大盛り」ならば、「+100円」ぐらいついているかもしれません。

あるいは、自動車に「車台:70万円、エンジン:80万円、外装・内装:50万円、タイヤ:3万円✕4」と値札がついているのも、ありえません。

しかし、ホームページ制作ならば、当たり前に……

  • ディレクション料:100,000円
  • トップページデザイン料:50,000円
  • 下層コーディング料:80,000円
  • ドメイン取得費:10,000円
  • …(以下、続く)

……と書かれているでしょう。

しかも、その項目名の多くは「キャベツ代」のようにわかりやすいものではありません。聞いたことがあるような、ないような名前ばかり並びます。

見積書が複雑なのは、「値段を納得してもらうため」と「下請け制度」が理由

自分(ペンタ工房)とはまったくやり方が違うので、「なぜ、このように細分化した明細書をつくるのか」は推測するばかりです。

しかし、ライター兼カメラマンとして制作業者に関わった経験があります。また、X(旧・Twitter)などでも同業者の発言は常にチェックしています。

それらから導き出される結論は……

  • 項目をたくさん作って、それぞれに値段を書いたほうが、お客さんに合計金額を納得してもらいやすい
  • 項目の分だけ下請けさん(外部委託のフリーランス)がいる。それぞれ計算を挙げておかないと、自分自身の収入の計算が“どんぶり勘定”になる

……です。

ホームページ制作の手間がわかっていない依頼主も多い

滋賀県甲賀市の信楽焼の窯元さんに言われたことがあります。「あんた、文章も写真もできるんやから、そのままうちのホームページを作ってくれないか」

窯元さんにしたら、「文章と写真をぱぱっと並べたら、ホームページぐらいすぐできる」と考えていたのは明らかです。

そのとき、私はまだホームページ制作のノウハウはまだ持っていませんでした。無責任に「ホームページ風のなにか」を作るだけならばできたとは思います。「訪問者がちゃんといる」「窯元さんの会社としての価値を高める」ものは無理です。

「あれ(ホームページ制作)はまたノウハウが違います。私では無理です」と断ってしまいました。

また、サンカクココナラのように、依頼主の側から制作者を公募するサイトでは、機能をフルに盛り込んだホームページが「5万円」といった“子どもの小遣い”程度で募集されているのをしばしば見かけます。これで「ホームページ経由で(おそらくウン百万円単位の)仕事の注文が定期的に入る」を期待しているのです。

これらを通していえるのは、「ホームページ制作にはどれだけの手間と時間がかかり、どれだけの数と種類の“エキスパート”が必要かわかっていないお客さん(依頼主)は少なくない」です。

「100万円」より「20万円+10万円……=100万円」の方がお客さんは納得しやすい

もし、見積書を中心に話が進むのならば、制作業者は2つの意味で大助かりです。

ひとつは「作業工程の説明になる」です。

業者によって違いはありますが、おおよそのところ相談を受けてからネット上で公開されるまで以下のような作業があり、業者側は以下のような役目の人が関わります。

  • 企画:ディレクター(あるいはプロデューサー)
  • Webデザイン:Webデザイナー
  • コーディング:フロントエンドエンジニア(コーダー)
  • ドメイン取得:ドメイン管理担当者
  • ……(以下、テスト・検証:QAエンジニア、 公開作業:システムエンジニアなど)

このように「役割・役職」を解説し、それぞれにかかる費用を告げたら、全工程を説明したような形になります。といっても、聞く側(依頼主)はいくらも理解できないとは思うのですが……

もうひとつは、「金額の見える化」です。

いきなり、「全部ひっくるめて100万円」といわれると、依頼主の多くは高いか安いかの判断はできないでしょう。

それが、「企画15万円、Webデザイン20万円、コーディング25万円……合計で100万円」といわれると、「十分な説明を受けた」と感じるのではないでしょうか。実は「企画15万円」なども“仕掛け”があって、そのまま受け入れていいとは限りません。しかし、そこまで気に掛ける依頼主は多くないようです。

デザイナー・コーダーなどなど、支払う相手がいるから項目が増える

見積書からは「これだけ多くの外部の下請けフリーランスに頼っている」という事情も透けて見えてきます。極端になると、その項目の数だけ下請けフリーランスがいます。制作業者には見積書であるのと同時に、なかば「支払書」でもあるのです。

一見大手制作会社でも、実際に作業しているのは外部の下請けフリーランス

まずは、以下2人分の“声”を聞いてください。

  • 制作会社経由の案件はもうやらない。下請け扱いで要件がコロコロ変わり、返事もないのに納期だけシビア。完全に疲弊した。お客様と直の仕事だと進行を自分で調整でき、要望がダイレクトに届き、感謝の言葉ももらえる。仕事の満足度が爆上がり。
  • 制作会社の下請けメインで仕事しているが、ディレクションできてないディレクターが多すぎる。どこをどう変えればいいのかわかるだけに、「指示が足りてませんので確認後、確定してから戻していただけませんか」と低姿勢で行くと切れられる状況が続いている。もう下請け辞めたい。

これらは、制作会社(制作業者)の下請けをやった人の嘆き節です。

外注を依頼する側の声もあります。

  • 外注で地獄を見た経験が2回ある。ライターと音信不通になり、納期前なのに連絡が途絶えた。1人はクライアントへのインタビューを全て担当していて、録音データもメモも全てその人が持っていた。結果、納期直前に連絡が途絶え、データは消え、クライアントにも説明ができない状況に。

これらはすべてX(旧・Twitter)から拾いました。

わざわざお聞きいただいたのは、「依頼主にしたら、制作業者に話を持っていけば責任を持ってやってくれると思っているかもしれない。しかし、その場しのぎで外部の下請けフリーランスが頼りのところは少なくない」と知ってもらいたかったからです。

「大手ならば大丈夫だろう」と思った方もいるかもしれません。しかし、制作業者の大半は中小・零細です。一見大手であっても、広告代理店などの本業が大手なだけで、制作部門は最小規模のところばかりです。フリーランスが頼りなのは大差はありません。

制作業者のやるのは営業とディレクション

「制作業者がやる仕事が残っているのか」が気になるところでしょう。答えは「営業」と「ディレクション」です。

【営業業務】

  • テレアポやメール営業による新規開拓
  • オウンドメディアでの集客活動
  • メールチェックと顧客対応
  • 顧客との商談・ヒアリング
  • 提案書や見積書の作成

【ディレクション業務】

  • クライアントの要望を制作チームに伝達
  • プロジェクトの進行管理
  • 制作物の品質チェック
  • 進捗報告と顧客フォローアップ

特に「ディレクション業務」で「本当にこれができているのか。そういう能力のある人が担当してるのか」がしばしば問題になります。先にフリーランスの「声」で紹介したとおりです。

しかし、教科書的にいえば「制作業者は制作そのものではなく、制作を管理することが主な仕事」です。

制作業者の取り分はディレクション料や「中間マージン」

ホームページ制作見積書の資金フロー図。見積書からディレクション料は制作会社へ、Webデザイン料とコーディング料は中間マージンを経由して制作会社からフリーランスへ支払われる流れを表現。下請け構造の複雑さを視覚化
中にはWebデザイナーやコーダーを内製化(社員化)しているところもある。その一方で、フリーランスも多用されている。必要なときだけ集めればよいフリーランスは制作業者には重宝な存在だ。

「それだけあちこち(下請け)に支払っていたら、制作業者の取り分はほとんどない」と見えなくもありません。

もし、見積書に「ディレクション料」とあれば、それが制作業者の取り分です。また、「Webデザイン料」「コーディング料」とあっても、丸々下請けに回るわけではなく、制作業者は「中間マージン」を取るのが一般的です。

あくまで一例ですが、「見積書には『デザイン料:15万円』とあっても、Webデザイナーに渡るのは10万円。5万円は制作業者の取り分」となります。

Webデザイナーやコーダーの「法人成り」が抱える問題点

一般的に制作“会社”は、営業ができる(仕事が取れる)Webデザイナーやコーダーが「法人成り」(個人事業を脱し、会社法人化する)して始めます。また、それだけの営業力がないと、会社など始められません。

大半の制作会社はここで大きな問題を抱えます。

制作会社の“社長さん”の多くは、Webデザイナーやコーダー上がりです。SEOもわからなければ、文章執筆や写真撮影も素人です……

  • 訪問者がいなくてもお構いなし。お客さん受けのよい、見た目のみのホームページを作る
  • 「文章と写真はお客様でご用意ください」は当たり前

……になってしまいます。

内容で勝負できないのですから、こういった制作会社の武器は「値段の安さ」です。また、依頼主の方でも「ホームページ制作:滋賀県:格安」「ホームページ制作:大津市:激安」で探している人は少なくありません。

両者は容易に結びつきます。

こうして、ネット上には「文字をと写真が並んでいるだけ。訪問者はほとんどいない。会社やお店の価値を高めているわけでもない」という“ホームページもどき”が公開されます。

【中編】では、実際の見積書の例を見ながら、どこに注意すべきかを考えてみましょう。

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