スマホのカメラは仕事に使える? 過信は禁物、性能の限界も知っておこう
「スマホのほうがきれいに撮れる」「スマホの内蔵カメラのほうが高性能」と信じて、デジイチ(デジタル一眼レフ)やミラーレスには見向きもしない人がいます。あるいは、「一度、デジイチを使ってみたけど、やっぱりスマホの方がいい写真が撮れる」と戻ってしまう人も見かけます。
短期間で流れていってしまうSNSにアップするだけならば、スマホの写真でもいいでしょう。しかし、ホームページなどに掲載して、長い間見てもらい、しっかりと情報も伝えたい写真ならば、デジイチやミラーレスを使いこなして撮りたいところです。
目次
イメージセンサーの大きさが画質を左右する
まずは、スマホのカメラ、デジイチ、ミラーレスの違いを知っておきましょう。仕組みがわからないままでは、いつまでも“ブラックボックス”のままです。「スマホの方がいい」という“信仰”も残ったままになりかねません。
デジイチ、ミラーレスの定義
「デジタル一眼レフ」は、内部に“合わせ鏡”が何枚も組み合わされていて、ファインダーからは鏡に写った像を見るようになっているデジカメです。「レフ」とはこの鏡のうちの1枚です。
一方、ミラーレスでは、レンズを通ってきた像は電気信号に変換され、それを再生してファインダーの中や、ボディー背面のモニターで見られるようにしてあります。「鏡(ミラー)」がないので、「ミラーレス」です
スマホのカメラは「ミラーレス」と呼ばれることはありませんが、方式としては違いはありません。
カメラの画質を決めるイメージセンサーとは
いずれのカメラもイメージセンサー(撮像素子)で光を受けて、データとして保存します。昔のカメラでいうフィルムです。イメージセンサーは受光素子というミクロの部品の集合体です。それぞれの受光素子は自分のところに当たった光の強弱を記録します。
このひとつ分の記録が画素です。たとえば、「2,000万画素のイメージセンサー」の場合、2,000万個の受光素子がイメージセンサーの中に並んでいます。
イメージセンサーの大きさは様々ですが、同じ時代に開発されたものならば、大きいほど画質がアップすると考えていいでしょう。
というのは、同じサイズの受光素子を使うのならば、イメージセンサーを大きくするほど受光素子を数多く使え、写真が精密になります。2,000万画素のイメージセンサーならば、そのまま面積を倍にすれば4,000万画素にできます。
あるいは、数を抑えて受光素子のサイズを大きくすれば、ひとつあたりの受ける光の量が大きくなり、その強弱が正確に記録できます。詳細は避けますが、これは輪郭や色の再現にも影響します。
スマホはイメージセンサーも受光素子もごくごく小さい
デジカメやミラーレスの多くで使われているイメージセンサーはフルサイズ(36mm×24mm)かAPS-C(24mm×16mm)です。
スマホの場合、最も一般的なのは1/2.3型(6.2mm×4.7mm)です。高級機の場合、1型(13.2mm×8.8mm)を採用している製品もありますが、面積いっぱいいっぱいを使っているわけではなさそうです。
1/2.3型(29平方mm)とフルサイズ(864平方mm)やAPS-C(384平方mm)を比べると、30倍近いか、10数倍の面積の違いがあります。
スマホでよく見かける1/2.3型で1,200万画素を、フルサイズ機ではやや画素数が多めの4,000万クラス機種と比べると、受光素子の大きさは大まかには10分の1程度です。受ける光の量も、10分の1なので光の強弱の正確な記録を期待するのは少し酷でしょう。
スマホで撮った写真の特徴
それでも、「一眼レフやミラーレスで撮るよりも、スマホで撮ったほうがきれい」と考えている人がいるのも事実です。実際にきれいな場合もあります。
強力に補正がかけられている
一部に例外もありますが、スマホで撮った写真はJPGというファイル形式で保存され、すでに強力に色調やコントラストが補正されています。これで、受光素子が保存したデータの質を補っています。
たとえていえば、かつてそう噂されていた「スーパーで売っている味付き肉」のようなものです。「素材の悪さを濃い調味料で補っている」といったところです。
さらに補正をすると、画質が一気に落ちる
色調やコントラストを補正する場合、その多くは画像になにかデータを加えるわけではありません。逆に間引いて、一部を残すことで色やコントラストを変えます。
強力な補正が1回かかっていると、かなりの量のデータが失われています。使えるデータが減っているため、再補正での画質はよくないことがほとんどです。
ピンぼけしない・ピンぼけさせられない
イメージセンサーには、「小さいほど被写界深度が大きくなる」という特徴があります。簡単にいえば、「イメージセンサーが小さければ、少々ピントを外そうが、見た目にはたいていのものにピントが合っているように見える」です。
これは、一眼レフやミラーレスだとピンぼけばかりを撮っている人にはホッとする話でしょう。スマホの多くは極端に小さいイメージセンサーを使っていますので。
しかし、「被写界深度を調整して、前後のどこまでピントが合っているように見せるか」は大事な写真表現のひとつです。スマホで撮るときは、これを放棄せざるをえません。
ただ、この点については近年の機種では工夫がされるようになりました。デジタル的に処理して、背後などをぼかす機能も多くの機種で採用されています。「はたして、それがいいのか」は少し気になるところですが、ちょっと見は違和感がないようです。
あそこまで小さいスマホのカメラが高性能なはずがない
「スマホの写真がきれいなのは、内蔵しているカメラがものすごい高性能だからだ」と信じている人も見かけます。「直感的に、その考えがおかしいと思わないのかな」が正直なところです。
まず、内蔵カメラの大きさです。あんなに薄いスマホの筐体で、しかもその中のごく一部しか使っていません。値段も20万円ならばかなり高い方で、5万円や6万円でも手に入ります。
それが、体積は何十倍か何百倍あって、値段も20万円30万円するデジイチやミラーレスよりも高性能になりようがあるでしょうか。もし、そんな高性能でありながら、小さくて安くできる技術があるのならば、デジイチやミラーレスにもとっくに採用されているはずです。
まずは、初心者向けのノウハウ本の一冊でも読もう
本格的なホームページに使う写真は、やはりデジイチやミラーレスを使いこなして撮るしかありません。
まずは一冊、薄いものでいいので、初心者向けの『写真の撮り方』でも目を通すようにしましょう。スマホの方がいい写真が撮れると信じている人は、この程度の手順さえ踏んでいないのではないでしょうか。
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