これがわからないとカメラが理解できない 絞りとシャッタースピードの関係
スマホでしか写真を撮っていなかった人が、ミラーレスやデジイチ(デジタル一眼レフ)を使い始めると、戸惑う点がいくつもあるようです。そのうちのひとつが、「絞り」と「シャッタースピード」です。スマホでは何も考えずに撮れていたでしょうから、ある程度は無理のないところかもしれません。
「カメラを水道に置き換える」がこの種の説明の定番です。まずは、これだけ覚えておきましょう。
「蛇口を絞って、水をチョビチョビ出すと、バケツを満杯にするのに時間がかかる」「蛇口を全開してドバっと出せば、すぐに終わる」
「水の出し具合を調整する栓」と「水を流している時間」が、カメラではそれぞれ「絞り」と「シャッタースピード」に当たります。「満杯まで水を受けるバケツ」が「イメージセンサー」です。
目次
光が通る穴の大きさを調整する仕掛けが「絞り」
水にしろ光にしろ、通り道に狭いところがあると通過できる量が減ります。その「狭いところ」が水道ならば「栓」で、カメラのレンズならば「絞り」です。
レンズの「絞り」とは、水道でいえば「蛇口の栓」
一般的なレンズには、その途中に「絞り(絞り機構)」があります。
狭くする場合は、絞り込むように周りから「羽根(絞り羽根)」が出ていきます。もちろん、「絞り」の名前もこの特徴から付いています。
水道でいえば、蛇口の栓に当たる部分です。水道の場合はここを開け閉めすることで、流れ出る水の量を調整します。
カメラの場合は絞りを大きく開けたり狭くしたりしてレンズを通ってイメージセンサーへと向かう光の量を調整します。
絞りの開け具合は「F値」で表す
絞りがどの開いているか(どのくらい一気に光を取り込んでいるか)を示す数値が「絞り値」です。別名は「F値(えふち)」です。
F値は小さいほど、絞りが大きく開けられています。また、この度合いは絞りが開いている部分の直径に応じています。つまり、「F5.6」と「F8」ならば、「F5.6」の開いている部分の方が直径は1.4倍(√2倍)、面積では2倍です。
「F5.6」を基準に考えて、「F4」ならば開いている面積は2倍、「F11 」は4分の1、「F16」ならば8分の1です。
初心者向けの標準ズームレンズはF値が大きい(口径が小さい)
そのレンズの最も小さいF値を「開放値」と呼びます。開放値が小さいほど直径が大きいレンズで、「大口径のレンズ」や「明るいレンズ」といった言い方をします。
初めてカメラを買う人用に「レンズキット」としてカメラボディーと組み合わされている標準ズームレンズの開放値は、広角側でF3.5前後、望遠側でF5.6前後が一般的です。
このF値は単に光を受け入れる量の指標になるだけではありません。「被写界深度」にも直結しています。違う言い方をすれば、「背景がぼかせる・ぼかせない」です。小さい数値(絞りを大きく開く)ほど背景がぼけます。
初心者向けの標準ズームの「広角側でF3.5前後、望遠側でF5.6前後」はかなり大きな数字です。すなわち、「光の通り道を目いっぱい開けても、あまり背景をぼかせない」と承知しておきましょう。
カメラが光を受け入れている時間の長さが「シャッタースピード」
バケツに水を入れるとき、「どのくらいの量を蛇口から出すか」と同時に気にするのは、「どれだけの時間の長さ、水を入れるか」でしょう。あまりに当たり前のことですが、時間が短いとバケツは満杯にならず、時間が長すぎると水はバケツからあふれてしまいます。
カメラの場合に「どれだけの時間の長さ、水を入れるか」に当たるのが、「どれだけの時間の長さ、光を通すか」です。これを「シャタースピード」と呼びます。
シャッタースピードの表示は2倍ごと
F値が4、5.6、8、11と√2刻みで表示されるのが一般的なのに対し、シャタースピードは1/125秒、1/250秒、1/500秒、1/1000秒と順番に半分・2倍刻みになっています。「1/125秒」の前が「1/60秒」と微妙な数値になっていますが、これも「半分・2倍刻み」と考えてください
今の大半のミラーレスカメラでは、実際にはさらにこれらの1/3刻みでシャッタースピードを設定できます。
「半分・2倍」で表すのは、かつてカメラがほとんど金属とギア、バネでできていた名残です。シャッタースピードを細かい刻みで作るのが難しかったのです。
また、これら「1/125秒、1/250秒、1/500秒、1/1000秒」はそのままの数値です。つまり、どちらかにひとつずらすと、レンズが通す光の量は半分・倍に変化します。
このシャッタースピードの数値は、√2刻みのF値と対応しています。たとえば、「F値が4、シャッタースピードが1/500秒」と「F値が5.6、シャッタースピードが1/250秒」は同じだけの光がイメージセンサーに当たります。「絞りの開いている面積は半分になり、イメージセンサーに当てる時間は2倍になった」ということですので。
イメージセンサーに光を当てる時間を決める装置には2種類ある
水道の水をバケツに入れるのならば、水を流す時間は、「蛇口をどれだけの時間開くか」で調整するのが普通でしょう。
通常はやらないでしょうが、板などフタになるものを用意し、その開け閉めでも「水の入れ始め」「満杯になったから終了」もできないわけではありません。
カメラに話を戻すと、「絞り羽根の開け閉めだけで時間の調整をする」と「絞り羽根は多少長く開けておいて光は通し放しにし、イメージセンサーを覆う幕(シャッター幕)の開け閉めで調整をする」に相当します。
前者のやり方を「レンズシャッター」、後者を「フォーカルプレーンシャッター」と呼びます。今のミラーレスやデジイチのが採用しているのは、ほぼフォーカルプレーンシャッターです。
シャッター幕の動き方には2通りある
バケツに蛇口からの水を入れるのならば、バケツの口のどこに水を落としても問題ありません。同じように水がたまります。
一方、カメラの場合は、平たいイメージセンサーのどの部分も同じだけの時間開けなければいけません。フォーカルプレーンシャッターでは「先幕」「後幕」の2枚を動かし、部分ごとの差が出ないようにしています。
また、先幕・後幕の動きはシャッタースピードが低速か高速かで異なります。
低速シャッターのとき
機種によって異なりますが、1/30秒や1/60秒といった低速シャッターの場合の動きです。
まず、イメージセンサーを覆っていた先幕が下がり、イメージセンサーの上部から順に光を当てていきます(露光)。そして、イメージセンサーが全開している状態があり、その後に後幕が下がって順番にイメージセンサーを覆っていきます。
お気づきかもしれませんが、一枚の写真の中でも、写っているタイミングが微妙にずれます。上ほど早く、下ほど遅くなるのです。
また、シンプルな機能のストロボであれば、イメージセンサーが全開している間に発光します。
高速シャッターのとき
大半の機種では1/250秒より早くなると、先幕・後幕はこの動きです。中には1/60秒でもこうなる機種もあります。
低速シャッターの場合と異なり、イメージセンサーが全開する前に後幕が下り始めます。言い換えると「2枚の幕でスリットを作り、そのスリットがイメージセンサーの上を舐(な)めていく」です。
写っているタイミングは上ほど早いのは、低速シャッターの場合と同じです。
もし、ストロボをシンプルに発光させると、イメージセンサーの一部にしか、そのストロボが反映した光景は写りません。そのため、かつては「幕がスリット状になるシャッタースピードではストロボは使えない」とされていました。
しかし、このスリットが動いている間に何度も発光させることでイメージセンサー全体にストロボが反映した光景が残せるようになりました。この機能は「ハイスピードシンクロ」と呼ばれています。ただし、この機能を使うには、カメラボディーとストロボの両方が対応している必要があります。
イメージセンサーには適切な量の光を当てる必要がある
蛇口からの水をバケツに入れるのならば、「15リットルのバケツに10リットルだけ入れる」でも問題ないでしょう。「大を小を兼ねる」で済んでしまいます。
出す水の勢いが強すぎたり、流している時間が長すぎたりすると、バケツから水があふれ出してしまいます。しかし、「バケツを満杯にする」の目的は果たせます。
しかし、カメラで「絞りを大きく開けすぎた」「シャッタースピードが長すぎた」、あるいは逆に「絞りの開け方が足りなかった」「シャッタースピードが短すぎた」ならば問題です。
「露出オーバー」となって写真が真っ白になったり、逆に「露出アンダー」で写真が真っ黒になったりします。
「絞り」×「シャッタースピード」は必ず適正な量にしなければいけません。「バケツであれば、必ず過不足なくピタリと満杯にしないといけない」ということです。
少しの量の光で写る「高感度」とは
ここまであえて「感度」の話は避けてきました。しかし、「絞り値」「シャッタースピード」と並んで、適正露出(明るすぎない・暗すぎない画像データ)を得るには無視してはいけない要素です。
感度は「ISO(アイエスオー)400」「ISO1600」いったように表示します。数値が高いほど感度が高くなります。「少ない光の量でも、適正露出が得られる」とご理解ください。
また、感度の高い・低いはこの数値のまま比例します。たとえば、ISO1600に感度を設定した場合、ISO400で撮る場合に比べて、1/4の量の光で同じように写ります。
これを水道やバケツの話で考えるのならば、「『低感度』とは満杯にするのに大量の水が要る大バケツ。高感度とはその逆」と考えるとよいでしょう。
ただし、「同じように写る」といっても制約もあります。あまりに高感度にすると、コントラストが低くなる・色が不自然になるなど画質が低下します。
機種にもよりますが、「Web記事に使う程度ならば、ISO3200でも十分に大丈夫」と考えてよいでしょう。
カメラの構造を実感するには、自分の目で絞り羽根を確認してみる
フィルムカメラは、金属の筐体、ガラス玉、ギアでできており、動かす力もバネが主でした。レンズにはほぼ間違いなく絞りリングが付いていて、カメラボディーから外した状態であっても、ほとんどリングを回す程度でそのまま絞りの開閉ができました。
わざわざ覚えようとしなくても、「ここが光の通り道である。ここの開き具合で光の流入を調整している」と理解できます。
フィルムカメラでもその傾向はあったのですが、デジカメでは多くの機能が一気にブラックボックス化しました。絞りも単純なものではなくなりました。
しかし、デジカメでもちょっと工夫すれば絞りを肉眼で確認できます。
・標準ズームであれば、望遠側いっぱいいっぱいにする
・シャッタースピードや絞りはオートでもOK
・レンズを明るい方に向け、先端からレンズの中をのぞきこむ
・シャッターボタンを半押しにする
機種にもよりますが、これで絞りがいくらか閉じた状態が見えるはずです。
「絞りやシャッタースピードがイメージできない」の解消につながるかもしれません。ぜひ、お試しください。
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