超初心者向けのデジカメはどれがいい? 私のおすすめは「DC-G100D」
デジタル一眼レフやミラーレスを初めて買う場合、さんざん迷うでしょう。メーカーは5つも6つもあるし、それぞれが10や20の機種を出しています。値段もレンズとセットで10万円を切るものから、カメラボディーだけで軽自動車1台分のものまであります。
頭をよぎるのは「ムダによすぎるのを買いたくない。かといって、画質や耐久性に問題のあるものも嫌だ」ではないでしょうか。
初心者や「ホームページやオウンドメディアに掲載する写真も撮りたい」といった人ならば、最も安いクラスのもので十分です。具体的にはパナソニックのLUMIX DC-G100Dをおすすめします。
目次
デジカメは買ってすぐに使いこなせるものではない
多くの人が見落としているのは、「デジカメを使いこなし、まともな写真を撮るには、知識もスキルも要る。休日のたびに撮る人でも、習熟するには何カ月もかかる」です。どれだけ値段が高く、機能が充実していようと、買った翌日からまともな写真が撮れるわけではありません。
「最初からおベンツは買うな!中古のカローラにしておけ!!」
ウン十年前、私が自動車免許をとったころ、周りではこんなことがいわれていました。
「免許取り立てで、いい車なんて乗る必要ないよ。どうせ、ぶつけたり擦ったりしてボロボロにするだけだ。それが惜しくなるようないい車に乗ると、乗るのが嫌になってしまい、運転する機会が減る。いつまでたっても運転がうまくならない。
中古のカローラで十分だよ。それを乗り回しなよ。いい車を買うのはその後でも遅くない」
これをコピー化すると、「最初からおベンツは買うな!中古のカローラにしておけ!!」です。
デジカメも同じです。最初から高級機を買う必要はありません。むしろ、撮影上達の足を引っ張る可能性があります。
今どきのデジカメの説明書は400ページ500ページある
まだデジタル一眼レフやミラーレスを買った経験のない人は知らないでしょう。今どきのデジカメの説明書は300ページ台ならばまだいい方で、500ページを超えるものまであります。
大半の人にとって、人生で手にする最も分厚い説明書ではないでしょうか。
しかも、説明書の内容を理解したからといって、「デジカメの操作がわかる」だけです。「写真を撮るスキル」はまた別の世界です。
実際のところ、周囲の写真初心者で説明書をちゃんと読んでいる人は見たことがありません。「取り組もうにも、どこから手を付けていいかわからない。だから、説明書は放置したままにして、とにもかくにもデジカメを使ってみる。写真撮影のスキルを覚える必要があることなど、どこかに飛んでいる。どんなにおかしい写真を撮っていても気が付かない」のが、むしろ当たり前になっています。
少々苦しくても、「説明書を理解する」は第一歩として避けては通れません。安いデジカメを買おうが、高いデジカメを買おうが同じです。また、説明書の内容を理解するためにも、実際にデジカメを使う必要があります。だからこそ、「少々傷がついても気にならないやつにしておけ。それを使いまくれ」なのです。
おすすめしないのは、大きくて・重くて・値段の高いデジカメ
逆に、がんばっていいカメラボディー・いいレンズを買うと、「傷をつけたくない」などと使わずじまいになりかねません。それではいつまでたっても写真がうまくなりません。また、こういったいいデジカメは値段が高いだけではなく、大きくて重いのが普通です。持って出るだけでも面倒になり、いっそうタンスの肥やしになりがちです。
デジカメの高級度はイメージセンサーの大きさで判断する
興味を持ったデジカメが高級機種か下位機種かを判断する材料のひとつが「イメージセンサー(撮像素子)の大きさ」です。
特別大きな中判(44×33mm)もありますが、一般的には「フルサイズ」「APS-C」「マイクロフォーザーズ」の3つの区別が付けば十分です。
・フルサイズ=36×24mm(かつての最も一般的なフィルムと同じサイズ)
・APS-C=23.6×15.8mm(面積でいえば、フルサイズの4/9)
・マイクロフォーサーズ=17.3×13mm(フルサイズの1/4)
イメージセンサーは、自分のところに受けた光の強弱を記録する受光素子が縦横に並んでできています。この受光素子1個が画素1個に相当します。つまり、「2,000万画素のイメージセンサー」といえば、2,000万個の受光素子で構成されています。
イメージセンサーの面積が広く、受光素子の数が同じ場合、受光素子一個一個の区画を大きくできます。「受けた光の強弱を正確に記録できる」とお考えください。色の再現性などがアップします。
イメージセンサーの面積が広くなっても、受光素子の区画が狭いままならば、より多くの受光素子が並べられます。「ち密な画像が得られる」と同じ意味です。
もちろん、この2つの間を狙って、「受光素子の区画をいくらか大きくし、数もいくらか増やす」も可能です。
ほかの要素も大きいのですが、イメージセンサーだけでいえば、大きなものを採用しているものの方が高級機種・高性能機種です。
ニコンやキヤノンなどメーカー間での違い
大半のメーカーが「大きいイメージセンサーのラインアップ」「小さいイメージセンサーのラインアップ」の2系統作っています。ただ、イメージセンサーの大小の組み合わせが違うだけではなく、戦略も異なります。
○ソニー・ニコン・キヤノン
・フルサイズ=上位機種・主力機種の扱い。
・APS-C=下位機種・非主力機種の扱い。専用のレンズの数が少ない。機能の一部が意図的に(?)省略されている機種もある。
○富士フイルム
・中判=高級・高価格すぎて、一般人には無縁。
・APS-C=富士フイルムでは主力機種。レンズの種類も多く、カメラボディーの機能も充実している。※私(柳本)が愛用しているのはこれ
○パナソニック
・フルサイズ=比較的遅く参入した(2019年)。それまではマイクロフォーサーズのみ。
・マイクロフォーサーズ=フルサイズ参入後も非主力機種扱いはほとんど見られない。カメラボディーや専用レンズも比較的多い。
画質はデジカメ選択のチェックポイントから外していい
ここで考えないといけないのが……
「イメージセンサーが大きいほど、色の再現性がよくなったり、画素数も増えて画像がち密になったりする」といっても、自分が必要なのはどこまでか?
……です。
2002年までキヤノンもニコンもAPS-Cのデジタル一眼レフしかありませんでした。そこにキヤノンがフルサイズのデジタル一眼レフを出したところ、ニコン派だったプロカメラマンが一斉にキヤノン派にくら替えしました。もちろん、画質のよさが理由です。ニコンのフルサイズ機はそこから5年も遅れ、その間、シェアを大きく落としました。
ただ、イメージセンサーが大きくなるほど、カメラボディーもレンズも値段が跳ね上がります。「金属やガラスなど、使う素材の量が多い」は大きな理由ではありません。「少し大きくなるだけで、設計が難しくなり、必要とされる加工精度も高くなる」ためです。
また、ニコンが手痛い敗北をしてから20年もたっています。この間の電子部品の発達はすさまじく、イメージセンサーや受光素子も例外ではありません。
はっきりいって、初心者や「ホームページやオウンドメディアに掲載する写真も撮りたい」といった人たちには、フルサイズ機はオーバースペックです。イメージセンサーが大きくなると、カメラボディーやレンズも大きく重くなるのも、忘れてはいけません。今の性能ならば、APS-C機かマイクロフォーザーズ機で十分です。
「耐久性が高い」「雨などの悪コンディションでもトラブルを起こしにくい」といった機種もあります。しかし、これらが必要になるのは、事件・事故現場に行ったり、雨の中でもスポーツ写真を撮るようなプロカメラマンぐらいです。通常の使いかたをしている分には、DC-G100Dを含む通常の機種でも簡単に壊れるものではありません。
デジカメは少しでも安く買って、写真加工ソフトにお金を回す
実はカメラボディーやレンズの性能以外に、写真の良し悪しを左右する大きな要素があります。撮影後のレタッチの有無とそのレベルです。レタッチはほぼイコール「Photoshopで色調やコントラストを整える」と考えてください。
①フルサイズ機のカメラボディーを持っている。大口径(≒レンズの直径が大きい)の標準ズームも買った。合わせて、値段は50万円以上。しかし、Photoshopは全く使えない。関心もない。
②使っているのはマイクロフォーザーズのボディー&標準ズームで、値段は10万円以下。ある程度はPhotoshopが使える。
この①と②の2人が対決したら、間違いなく後者のほうがまともな写真が残せます。
そのPhotoshopには、料金がサブスクのAdobe Photoshopと買い切りのPhotoshop Elementsの2種類があります。
単に「Photoshop」と呼んだ場合は、通常は「Adobe Photoshop」を指します。一方のElementsは機能省略版とされていますが、撮った写真の完成度を高めるためならば十分です。値段も2万円程度しかしません。
「値段の高い機材を周囲に見せびらかして、自慢をしたい」というのでなければ、自分にとってオーバースペックなフルサイズ機に大金を使わず、2万円だけ予算を割いて、Photoshop Elementsを買いましょう。ただし、「Photoshopも一朝一夕では使いこなせないのは、カメラボディー&レンズと同じ」は覚えておいてください。
パナソニックのDC-G100Dを選ぶわけ
以上の考えから、初めてデジカメを買う人には、パナソニックの「LUMIX DC-G100D」をおすすめしています。すでに、相談してくれた人や私とその人たちのやり取りを見た人ら5、6人が実際に購入しました。
DC-G100Dの特徴、小さい・軽い・安い
おすすめしている理由は……
・レンズと合わせて10万円を切るデジカメは、そう多くはない
・とにかくコンパクト
・安くて小さいけども、見た目の質感も手にした感触も悪くない
・ソニーやニコンの下位機種の中にはファインダーが省略されているものもあるが、DC-G100Dにはちゃんとある(昼間の屋外でも使いやすい)
・画素数の2,000万も、ネットにアップする写真には十分
……などです。
もし、中古が見つかるようならば、選択肢に入れましょう。マップカメラの「良品」ならば、「新品で買って、2、3カ月の間、そこそこていねいに使ってみた」と変わらないコンディションです。
ここまでやれば、「最初からおベンツは買うな!中古のカローラにしておけ!!」も完成します。
初心者の間は気にならない程度だが、弱点もある
これだけ安くてコンパクトならば、犠牲にしている部分があるのは当然です。次のような弱点があります……
・ストロボ同調速度が遅い(≒ストロボが使える条件がやや限られる)
・被写界深度を浅くできない(≒背景をぼかした写真はあまり撮れない)
・マニュアルフォーカス(ピント合わせを機械任せにしない)が使いにくい
・イメージセンサーのクリーニング機能(チリやホコリなどの汚れを落とす機能)がない
……などです。
最初の3つの弱点が気になるのは、ある程度写真がわかるようになってからでしょう。
クリーニング機能はあったほうが望ましいのは確かです。しかし、あっても十分ではありません。カメラのキタムラにでも持っていって約3,000円出せば、その場でイメージセンサーをきれいにしてくれます。
ソニーやキヤノン、ニコンのAPS-C機との比較
ソニー、キヤノン、ニコンのAPS-C機でもレンズとセットで10万円程度の機種があります。また、イメージセンサーはマイクロフォーザーズより大きいとはいえ、大差はありません。したがって、ボディーやレンズもたいして大きく、重くなるわけではありません。
それでも、選択肢から外すのは、「フルサイズ機が上位機種。APS-C機は下位機種の扱い」のせいです。
下位機種扱いゆえに……
・レンズの種類が少ない。あってもズームレンズばかりで、単焦点レンズは特に少ない
・ボディーの種類も少ない
・コストダウン&主力機種との差別化のせいだと思うが、機能が省略されている場合がある。特にニコンで顕著
……といったおすすめしにくい理由があるのです。
実は、2019年にパナソニックがフルサイズ機に参入したとき、「パナソニックも今後はマイクロフォーサーズ機を下位機種扱いするんだろう」と見ていました。
しかし、そこから5年たってもマイクロフォーサーズのラインアップを縮小せずに来ています。「今のところ、マイクロフォーサーズを使い続けても、レンズもカメラボディーも選択肢は多い。DC-G100Dからボディーを更新したり、レンズを増やすにも困らない」と思えるようになりました。
最近になって急にパナソニックをおすすめしている大きな理由です。
また、マイクロフォーサーズ機はメーカー間で規格が統一されています。ほかに出しているメーカーは具体的にはOMシステム(旧・オリンパス)があります。つまり、「パナソニックのカメラボディーにOMシステムのレンズやストロボを使う。あるいはその逆」も可能です。「交換レンズの選択肢にはOMシステムの製品も入る」とご理解ください。
パナソニックの会社としての特徴
「同じ程度のスペックの機種同士の比較ならば、パナソニックのデジカメは安い」との話をよく耳にします。
私自身は十分に検証していないので、当たっているとも当たっていないとも判断はできません。しかし、パナソニック(旧名・松下電器)の社風や歴史を考えると「そういう可能性はあるだろう」と思えます。
「画期的な商品を開発する必要はない。他社が出した製品と同種のものを安く出せばいい。あるいは、機能を付け足して出せばいい」。創業者の松下幸之助が実際にこの内容の発言を残しています。
あまりに露骨に二番煎じ(せんじ)をやるので、「マネシタ電器」と揶揄(やゆ)されていたぐらいです。「それが今の時代になっても続き、デジカメでもやっていてもおかしくない」と考えています。
DC-G100Dがもの足りなくなったら、予備機に回す
DC-G100Dは「最初からおベンツは買うな! 中古のカローラにしておけ!!」の考えの下、おすすめしているデジカメです。
使いこなせるようになるに従って、もの足りない面も出てくるでしょう。「それだけ自分がデジカメ・写真撮影を理解できるようになった」と考え、喜んで次の機種に進みましょう。
ただし、代わりの機種を手に入れても、DC-G100Dは簡単に手放してはいけません。
というのは、デジカメは手から滑らせて地面に落とすだけでも一発でアウトです。自分では気をつけていても、テーブルの上に置いたのをだれかが引っ掛け、床の上に落とすかもしれません。うっかり濡らしてしまい、内部にまで水が入ったら、これも一発アウトです。
仕事関係にでも使うようになっていたら、予備機なしでは不用心すぎます。DC-G100Dはその予備機には十分な機種です。
また、極めてコンパクトなことから、「今日は使う予定はない。しかし、念のためにかばんに放り込んでおこう」も気楽にできます。旅行時専門のデジカメにしてもいいでしょう。
3年前には富士フイルムをおすすめしていた
私自身は富士フイルムのAPS-C機を愛用しています。
また、3年ぐらい前ならば、初めてデジカメを買う人にもおすすめしていました。理由はいくつもあるのですが、1つだけ挙げると「APS-C機を主力機種としている唯一のメーカーだから」です。
ソニー、ニコン、キヤノンと違ってフルサイズ機がないので、メーカーとしてのそこへの誘導はありません。レンズの種類も多く、機能も充実しています。中古もたくさん出回っていました。
しかし、富士フイルムの社としての経営方針が大きく変わりました。値段の安い機種は廃止し、中くらいの機種には機能を増やして、値段をアップさせました。半導体不足の騒ぎをきっかけに中古は極端な品薄になり、値段は倍以上になっています。
3年前ならば、10万円も出せば、初心者には十分なコンディションと機能の中古カメラボディー&中古レンズが見つかりました。今はもう無理です。
どの機種もアナログのダイヤルを多用するなど、フィルム時代からカメラになじんでいる私にはとても使いやすくできています。特にマニュアルでの操作はしっくりきます。
私自身は使い続けますが、「少しでも安いデジカメがいい」という人が多い初心者には、もうおすすめできません。
写真がうまくなるための3要素
写真がうまくなるところまで撮り続けるには、3つの条件があると考えています。
①気楽に使い倒せるデジカメ
②撮るもの
③見てくれる人
①はDC-G100Dでクリアできるでしょう。
②の「撮るもの」と聞くと、「お祭りなどのイベント」「名所・旧跡」「海山の絶景」を思い浮かべる人も多いようです。そんなものが日常的に身近にある人はほとんどいません。こだわっているとデジカメがタンスの肥やしになるだけです。「お散歩写真」が撮れるようにしましょう。
③は今の時代ならばSNSですね。どうやら、私のように「撮れて当然と思われがちな人間(?)」よりも、「ちょっと危なっかしい撮り方だけども、一生懸命やっている人」の投稿のほうが反応がいいようです。ぜひお試しを。
また、「#485WP」 ハッシュタグをつけてX(旧・Twitter)に投稿してくれれば、少なくとも私は見ます。
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